高福寺庭園

高福寺庭園について

「真野山 高福寺」（こうふくじ）は神戸市長田区の海手に位置する浄土真宗（真宗佛光寺派）の寺院。『足立美術館』日本庭園の作者として知られる昭和〜平成を代表する作庭家・中根金作が作庭した枯山水庭園をはじめ、茶室「悠々亭」の茶庭・露地庭など複数のお庭があります。（ちなみに、神戸市のお庭はこれまで20箇所ほど紹介してきたけれど「長田区」のお庭は初。）

Jリーグ・ヴィッセル神戸のホームスタジアム「ノエビアスタジアム神戸」（神戸ウイングスタジアム）から西へ約2kmほど。阪神高速・湊川ジャンクションのすぐ近くという都市部、しかし一般の神戸観光ではあまり訪れる機会のない？エリアに位置する高福寺。現在は現代的な住宅地となっているエリアですが、古くは「真野池」「真野の継橋」「真野榛原」が名所と言われた景勝地だったそう。

その歴史について。創建は鎌倉時代末期の1333年（正慶2年）、以来長きに渡り真野地域を統括する寺院として信仰されます。

現在の伽藍へと変化を遂げていく（記録が残っている）のは大正時代以降。大正時代に十四間四面の大きな本堂が建立されるものの、昭和の戦時中に神戸大空襲で伽藍のほぼ全てを焼失。
その直後の1950年に再建された講堂も1995年の阪神大震災によって倒壊の被害を受けますが、比較的新しい年代（1980年代以降）に建立された山門・本堂・門徒会館・鐘楼と庭園によって寺観が形成されています。

境内には大まかに分けて3つの庭園があります。まず、山門から最も近く、参拝者が最初に目にする「涅槃の庭」。作庭を手がけたのは『足立美術館』の庭園が有名な作庭家・中根金作で1986年に作庭。
名前の通り「涅槃図」を表したお庭で、庭園中央の横たわった石をお釈迦様、その周囲の庭石や植物（刈り込み）によって菩薩やその他の生き物を表現。向かって左手に三尊石が配され、阿弥陀三尊が涅槃の様子を眺めている…という構成。また右手の大きなソテツは歌人・九条武子ゆかりのもので「九条武子女史の大ソテツ」と言われています。

このお寺さんを知り、訪れた理由は中根さんの庭園なのですが——実際訪れてみると「こっちのお庭の方が好きな人、居るんじゃない！？」なんて思うお庭が続く（これ以降のお庭は中根さんではない、作者不詳のお庭）。

面白いのが、宮大工・菅野守三が手がけた本堂——の地下にある門徒会館「自然堂」と一体化したお庭。元々の地形としての斜面に合わせた庭園は、昭和年代にも『ホテルニューオータニ日本庭園』の様なお庭があるけれど、お寺に明確に「地下室」を作って、そこから眺める急斜面のお庭——って結構珍しいデザインで（お寺でなければ、温泉旅館の大浴場の石組とかは技術・デザイン的には同じなのかもですが）、コンクリートの壁面が“モダンさ”を演出している。そのモダンさと頭上の紅葉がこれまたマッチしている！

その本堂・門徒会館の奥に、書院とお茶室が連なる和風建築があり、その周囲には茶庭／露路庭があります。茶室「悠々亭」は1967年（昭和42年）建立。当時のご住職が京都『泉涌寺』の塔頭『来迎院』でお茶をされていたそうで、「悠々亭」は来迎院にある赤穂浪士・大石内蔵助ゆかりの茶室『含水軒』の写しとなっています。

この高福寺には悠々亭をはじめとして7カ所もお手前のできる炉があるそうで、地域の方向けのお茶会などが催されているそう。神戸にそんな「茶の湯大好き」なお寺さんがあるなんて知らなかったな…！ちなみに浄土真宗のお寺ながら、京都『南禅寺』（臨済宗）の以前の？管長さんとご縁が深かったそうで、「悠々亭」もその方の命名。他には「光雲」というお堂もある。

そのほか建築内部は通常は非公開ですが、円山応挙から数えて6代目、墨絵の大家と言われる北井真生さんによる襖絵を寺宝として所蔵。

Googleマップでのクチコミ件数もあまりなく、地元の人以外にはあまり知られていないお寺さん——かもしれませんが、近年はSNSやnoteも解説されたり、気軽に訪れて欲しい、地域に開かれたお寺に——という想いの下、イルミネーションやJAZZライブを開催されたりと様々な取り組みもされています。これを機に知られた方もぜひ気軽に訪れてみて。

（2024年12月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。）