兵庫津ミュージアム 初代県庁館

Hyogo-no-tsu Museum Garden, Kobe, Hyogo

平清盛ゆかりのスポットも多く残る日本遺産“兵庫津”。2021年、新たな観光拠点として開館したミュージアムの枯山水/日本庭園。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

兵庫津ミュージアム 初代県庁館について

「兵庫県立兵庫津ミュージアム」(ひょうごけんりつひょうごのつみゅーじあむ)はかつて平安時代に平清盛が整備した港で兵庫県発祥の地“兵庫津”に2021年に開館したミュージアム。
2021年11月に幕末・明治期の初代兵庫県庁を復元した『初代県庁館』が開館、それに続き2022年11月に博物館施設「ひょうごはじまり館」がオープン予定。初代県庁館に枯山水庭園があります。

『北前船寄港地・船主集落』の構成文化財でもある“兵庫津”。てくてく歩くと平清盛ゆかりのスポット(清盛塚とか墓所とか大仏とか)が点在しますが、おそらく普通に神戸観光をするとなかなか行かないエリアでもある…。
今後その観光拠点を担ってゆく(と思う)のが兵庫津ミュージアム。サッカー・Jリーグ、ヴィッセル神戸のホーム「ノエビアスタジアム神戸」まで徒歩15分ほど。ノエスタ行く人に立ち寄ってほしい…!

そんな“兵庫津”の歴史についてざっくりと。古代には「大輪田泊」と呼ばれた兵庫津。奈良時代には行基が修築に携わり、平安時代のはじめには最澄空海がこの地から遣唐使として出発、鎌倉時代には一遍上人が滞在するなど歴史的な高僧たちも度々訪れた重要な港でした。

その歴史で兵庫津を一層発展させたのが平清盛。大きな港に整備すると日宋貿易の拠点となり、以後も室町時代の勘合貿易/日明貿易の拠点になるなど国際的な港として繁栄。
江戸時代には北前船の寄港地&西国街道と交差する街として更に発展、幕末の開港5港の一つにも選定されました(実際に開かれたのは兵庫津ではなく神戸港)。

1868年、廃藩置県に伴い初代県知事となったのは後の初代総理大臣・伊藤博文(伊藤俊介)。当初の県庁は兵庫城跡に建築された旧大坂町奉行所兵庫勤番所(尼崎藩兵庫陣屋)が用いられました。なお実際に兵庫城があったのもこのミュージアムのすぐ北にあるイオンモールのあたり。

現代にはすっかりその中心は神戸三宮〜元町あたりに移り変わりましたが、兵庫津や兵庫のルーツを知る歴史資料館として25年以上前から構想され実現したのがこのミュージアム(時期的に、震災があって、街の歴史を伝えることに価値が見出された頃だったのかも)。

先行して開館した「初代県庁館」は古絵図や絵画を元に、長屋門/メインの建物の県庁舎/休憩処になっている取次役所/旧同心屋敷/旧船見番小屋/仮牢といった複数の木造建築が復元されています。地元の「いるか設計集団」による設計。VR/ARを使って当時の人物(伊藤博文ら)に案内してもらう体験も。

そして旧県庁舎の前には日本庭園が広がります。仕立てられたマツや槙の木の植栽と緩やかな苔の築山、巨石はない(ように見せている)けれど多くの庭石による枯山水庭園。
この庭園は古い絵図には詳細に描かれていない(ように見える)のでオリジナルのデザインで——残念ながら施設の方には庭園に関する設計・施工時の資料は無いそうで、正しいデザイン意図は不明だけれど、北前船が兵庫津へと至る瀬戸内海の島々とその風景…的な感じかな?

【後日追記】作庭を手掛けられた兵庫県・植源田中造園田中孝和さんより資料をいただいたので庭園に関して追記します。

江戸時代には兵庫津奉行所〜勤番所として武家に用いられた歴史的背景から当時の庭園の様式・趣向を鑑みながら設計された準平庭式枯山水の蓬莱式庭園で、名主詰所・同心詰所と呼ばれた2つのお座敷が主な視点場(ビューポイント)。

苔と石組による5つの島々では神仙思想・蓬莱の世界観とともに兵庫県を構成する5つの国(摂津・播磨・但馬・丹波・淡路)を表現。
石材も六甲御影石など兵庫県の庭石や砂利が多く使われているほか、海から近く塩風を受けやすいことを受けて島々を覆う苔は潮への耐性が比較的あるスナゴケが用いられているそう。

(ここから元の文章:)施設のそれなりの面積を占めるオリジナルデザインの日本庭園…それが開館から半年しか経っていないのに、作者やデザイン意図が施設側で把握されていない=施設の価値として認識されていないというのは、庭園ファンとしてはとても寂しい。
でも決して施設だけを責めているのではなく、これが「日本庭園側が日本庭園の魅力を伝えきれていない」という課題だと思うんですよね…。

商業施設は5年10年で移ろっていってしまう可能性があるけれど、県立博物館は50年100年と残り続ける。だから尚のこと「作者のメッセージ」が残らないのはもったいない。ましてやそういうミュージアムの日本庭園を作るチャンスって、国内では今後どんどん減少すると思うだけに。
「小堀遠州」とか「小川治兵衛」とか「」とか過去の人のアーカイブも大切だけどもさ、今を生きる・今生まれた庭をちゃんと残すために伝え・アーカイブすることも大切だと思うので…「日本庭園」側の発信を増やしていきたいですよね…!

(2022年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

神戸市営地下鉄海岸線 中央市場前駅より徒歩3分
JR神戸線 兵庫駅より徒歩15分
神戸駅・新開地駅・長田駅より路線バス「中之島」バス停下車 徒歩1分

〒652-0844 兵庫県神戸市兵庫区中之島2丁目1-17 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約8万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,800以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
PICK UP / COLUMN
最新の庭園情報は約8万人がフォローする
【おにわさん】のSNSから。