田勇機業(たゆう)庭園(田茂井邸庭園)

Tayuu Garden, Kyotango, Kyoto

重森三玲が丹後ちりめんの織元の庭園として、京丹後の景観を表現した枯山水庭園“蓬仙寿の庭”。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

田勇機業(田茂井邸)庭園について

【見学には要予約】
「田勇機業庭園」(たゆうきぎょうていえん)は重森三玲が1970年、晩年の74歳の時に作庭した枯山水庭園。重森三玲関連の本では『田茂井邸庭園』として紹介されています。
2019年8月の西日本旅行もいくつか重森三玲関連の庭園を見学したのですが、一番最初に載せたいと思ったのはこちら――というのは、今回ご案内いただいた奥様が現在もとても愛情を込めて管理されていることが話をしていてすごく伝わってきて、嬉しかった・楽しかったから。個人邸の日本庭園は管理をする上での苦労も色々ある(もちろんそんな話もした)けれど、この庭園を“宝”に思っている。自分は作庭する側ではないけれど、代を越えてもそう思ってもらえる庭園は作り手冥利に尽きるんじゃないかなあ…なんて。

最近は“海の京都”で観光振興中の京都の丹後地方。天橋立や宮津は(この年始含めて)2度足を運んだことがあったけれど、それ以西…京丹後市には初めて行きました!今回はこちら含めて京都丹後鉄道沿線の庭園を幾つか巡ったのですが、その中でも一番の目的はこちらでした。

田勇機業は昭和の初めに創業した“丹後ちりめん”の織元。丹後ちりめんとは。詳しくはWikipediaを参照していただきたいのですが、江戸時代以降に丹後地域で(特に当地の峰山藩では藩の施策として)発展した絹織物・その生産業。江戸時代には京の西陣を脅かす存在にまでなり、現在も国内の和装地の6〜7割のシェアを丹後ちりめんが占めるそう。…断じてしらすみたいなやつではありません。

この田勇機業はたびたび京都府や国の省庁のコンテスト?でも賞を受賞しているほか、東急プラザ銀座のフロアの一部に生地が採用されたり、パリコレへの出展を果たしたことも。またかつては番組の取材で関ジャニ∞メンバーが訪れたこともあったそうで、丹後ちりめんの生産のみならず対外的に伝えるための活動も積極的に行われています。

工場見学とともに事前予約で重森三玲の手掛けた枯山水庭園「蓬仙寿の庭」の見学ができます。かつては町内に3件も重森三玲の庭園があったそうですが、現在も残るのはここだけとのこと。
二代前のご当主の繋がりから作庭を頼むこととなり、丹後の景色などにインスピレーションを受けて表現されたのがこの庭園。ちなみに多く見られる石は重森三玲が阿波の青石を京丹後まで持ち込まれたものだそう。

あとこの田茂井家で初めて観たものは、“重森三玲が設計に携わった家屋”。庭園に面する邸宅の設計(の一部?)に携わったそうで――重森三玲が設計を手掛けた茶室はこれまで幾つか見ているけど、邸宅を手掛けているという点では初めて。今回観させていただいたのは玄関だけですが、座敷とかはどうなっているんだろうな〜。
「夜は(家屋側の)ライトで庭園を照らせるようにしてあって。満月の日にその庭園を座敷から眺めるのが最高の贅沢」という話をして下さって――うおおマジでめっちゃ羨ましい!!と思いました。

そして冒頭に書いた通り、こうした話を含めて田茂井家の方がこの庭園を誇りに思っているんだな――ということを感じられた、そんな話をした時間が旅の中においてはとても大事なひと時でした。工場内のギャラリーにはこの庭園の写真パネルも。重森三玲ファンには是非訪れて欲しい場所!

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最後に網野の町について。最初この場所について調べていた時は駅から遠そうだなと思っていたけど、網野駅から徒歩30分掛かるとはいえこの町のメインストリートを通ってゆくので時間程遠くは感じないかも(レンタサイクルあると良い距離感なのだけれど…)。またバス路線も(本数多くはないけど)あるにはある。そしてそのバスに揺られると国指定名勝『琴引浜』にも行けます。
網野の町も京都丹後鉄道の特急が停車するぐらい、ちゃんとした町で――田勇機業の周辺には、古い町並みと言う程ではないけれど、少し懐かしい地方都市の町並みが残っている。古くて立派な旅館や商店もあるし、あとは“浦島太郎出生地跡”なんてスポットもある(笑)海の方に旅館・宿泊施設がもっとありそうだったからそこまで歩いてみたかったな…。

京都丹後鉄道沿線のその他の庭園も今後掲載予定です。国の重要伝統的建造物群保存地区「与謝野町加悦」の町並みにも初めて足を運んだのですが、その近辺含めて沿線には京都府指定名勝の庭園が意外と多い――そのうち行程上見られたのは3箇所ぐらいだったのだけれど、他にも3つ、4つあるんですよね〜。あと網野のお隣、峰山藩の中心地・峰山にも府名勝じゃないけど気になるところが幾つか。また足を運びたい地域!

(2019年8月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

京都丹後鉄道宮豊線 網野駅より徒歩約30分
網野駅より路線バス「網野中学校前」バス停下車 徒歩10分
※平日は網野駅から弥栄網野線「浅茂川区民会館前」バス停が最寄。

〒629-3104 京都府京丹後市網野町浅茂川112 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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