現代長野の作庭家・小口基實さんによる枯山水石庭。“棟飾り”が特徴的な信州の本棟造民家は国登録有形文化財。
塩尻短歌館について
塩尻市の広丘地区はかつて若山牧水、島木赤彦、太田水穂、窪田空穂といった明治時代〜近代の歌人が集った町だったそう。この「塩尻短歌館」(しおじりたんかかん)はそんな“短歌の町”に平成4年に開館された文学館。
その特徴的な主屋は明治維新の初年度1868年に建てられたもので、国登録有形文化財。そして中庭には現代長野を代表する作庭家・小口基實さん作庭による石庭“集石庭”があります。
2019年夏の「松本アウェーついでに色々庭園巡った」シリーズ。この短歌館は元々庭園目当てだったわけではなくて――
『中田家住宅』で松本には『馬場家住宅』という国重文の大きな民家があると教わった⇒そこで塩尻短歌館のチラシを見つけた⇒ここもかっこいい建築だなあー観たい!と思って訪れたという流れ。
元々は塩尻市の中心地、中山道沿いで石灰業を営んでいた旧家「柳沢家」の住宅として建てられたもので、短歌館の開館のために1992年にこの地に移築されました。
この建築も馬場家住宅も、後日紹介する小野宿の脇本陣も、信州の本棟造りの古い豪邸は“棟飾り”が欠かせない。その姿は“雀おどし”とか“すずめおどり”と言うのだとか(諸説あり)。純粋に出会うとワクワクする…し、建築史家/千葉大名誉教授・大河直躬さんの評では“長野県内に現存する本棟造りの民家の中では最も上質”とされます。
そして中庭に、木曽の国登録名勝『興禅寺庭園』の前庭なども手がける小口基實さんによる“集石庭”(集いの庭)があります。この平庭枯山水庭園はこの地で活躍した歌人を石に見立てて、彼らが新しい時代の渦潮に集まる姿を表現したもの。
手前にある小さな手水鉢は主屋と同じく柳沢家に元々あったものを移したもので、石庭を取り囲む龍安寺垣は“吹寄龍安寺垣”という進化系なのだそう。
短歌に興味ある方もない方も、この建物と枯山水庭園、穴場スポットです。そしてこの短歌館で見つけたのがその翌日に訪れた『笹離宮』でした。行き当たりばったり旅!
(2019年7月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR篠ノ井線 広丘駅より徒歩10分強
塩尻駅より塩尻市地域振興バスで「短歌歌入口」バス停下車 徒歩6分(※日曜運休・本数少ない)
〒399-0706 長野県塩尻市広丘原新田288-1 MAP