“諸戸水道”で桑名を支えた実業家・諸戸清六が近代に建築した国重要文化財の御殿と庭園。作庭は東京の宮廷庭園を多く手掛けた作庭家・小平義近。
諸戸氏庭園
【例年、春と秋に期間限定公開】
「諸戸氏庭園」(もろとしていえん)は三重・桑名にある国指定文化財(国指定名勝)の庭園。例年春(GW頃〜6月初旬)と秋の紅葉期、年に2回の公開期間があります。名前の似た『旧諸戸氏庭園』(六華苑)と隣接し、三連の煉瓦の倉庫が目印。また御殿も「諸戸家住宅」として国指定重要文化財(御殿内部は非公開)。
古くは室町時代に『江の奥殿』と呼ばれた矢部氏の屋敷・庭園をルーツとする諸戸氏庭園。江戸時代初期に豪商・山田彦左衛門の屋敷を経て、明治時代に入ると1884年(明治17年)に実業家として財を成した諸戸清六(初代)の手に渡りました。
諸戸家は江戸時代には長良川〜長島〜木曽川を挟んで対岸の「加路戸」の新田を開発し庄屋をつとめた旧家/大地主でしたが、諸戸清六の父親の代で事業に失敗しその地位を失います。
しかし幕末に当主となった初代清六が再び事業で成功。私財を投じて桑名市内に上水道「諸戸水道」を建設し市民に開放するなど桑名の町の発展にも貢献しました。(この諸戸氏庭園の前のレンガの水路がその面影を感じさせます)
室町時代〜江戸時代の庭園・屋敷地を元に、明治20年代に整えられていったのが現在のお屋敷と庭園。
庭園はゾーンとして2つに分かれていて、一つが順路序盤の秋にはモミジ、春〜初夏にはサツキ・ツツジ・カキツバタ・花菖蒲などが美しい庭園。そしてもう一つが順路後半の御殿前に広がる掘りが深い池泉庭園。
順路序盤の庭園が江戸時代以前の豪商・山田家の時代に作庭された庭園で、その中には茅葺の草庵“推敲亭”(三重県指定有形文化財)、そして“藤茶屋”などが建ちます。こちらは季節ごとの花や紅葉が楽しい庭園。
そして明治時代に作庭された、奥の“御殿庭園”。こちらは巨石による石組とたくさんのマツが見所の庭園で、その姿は琵琶湖の風景を模しているそう。作庭に携わったのは東京を中心に、静岡の『楽寿園』や栃木の『田母沢御用邸』など皇族・宮廷の庭園を手掛けている小平義近。
他の庭園であまり見聞きすることがない、鳥羽や志摩から運ばれた巨石や長島城・桑名城・鳥羽城で使われていたという庭石が用いられています。
この庭園を見下ろすように位置する御殿を手掛けたのは棟梁・鬼頭与吉、副棟梁は伊藤末次郎。伊藤末次郎は後年に隣接する『六華苑』の和館(国重要文化財)も手掛けられています。この御殿からは大隈重信や山縣有朋といった有名政治家も訪れたとか。修復が終わった時にはいつか中も見てみたい!
(2015年5月、2017年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR関西本線/近鉄名古屋線/養老鉄道/三岐鉄道 桑名駅より徒歩15分弱(駅近くにレンタサイクルあり)
桑名駅より路線バス「寺町」バス停下車 徒歩5分
〒511-0005 三重県桑名市太一丸18 MAP