湯元 啄木亭 松岡庭園

Yumoto Takubokutei Matsuoka Garden, Hakodate, Hokkaido

“函館の奥座敷”湯の川温泉のホテルに残る大正時代の日本庭園“松岡庭園”。北海道唯一の国指定文化財庭園“香雪園”にも関与した京都の庭師・辻地月の作庭。

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湯元 啄木亭 松岡庭園について

「湯元 啄木亭」(ゆもと たくぼくてい)は北海道函館市の“函館の奥座敷”湯の川温泉にあるホテル。2024年には第65期王位戦の第2局(藤井聡太王位対渡辺明九段)の舞台にも。大正時代、函館の実業家・松岡陸三の邸宅だった時代に京都の庭師・辻地月により作庭されたと言われる日本庭園“松岡庭園”があります。(※宿泊者以外にも、日帰り入浴の利用者の方でも散策できます。)

2025年春に数年ぶりに函館へ。函館市にある北海道唯一の国指定文化財庭園『香雪園(旧岩船氏庭園)』はこれまで訪れていましたが、他にも歴史のある庭園があるはず…という所で訪れたのが啄木亭。これが期待以上に素晴らしかった…!

函館空港からも程近く、国内外から観光客が訪れる“函館の奥座敷”「湯の川温泉」。その開発が始まったのは明治時代の中頃から。その中で路線バス事業を営むなど観光開発にも尽力した実業家・松岡陸三の自邸の庭園として1924年(大正13年)に作庭されたのが今日まで残る“松岡庭園”。
ちなみに、氏のご子息・松岡悟さんは医師/作家/JRAの馬主として名が知られ、オールド競馬ファンならご存じであろう平成時代の皐月賞馬「ドクタースパート」の馬主さんでもあります。

啄木亭の開業は昭和の終わり、1988年(昭和63年)。北海道を中心に宿泊・観光業を営む野口観光グループのホテルとして運営されています。ホテルの開業に当たり庭園は縮小されているそうですが(2,000坪→1,200坪)、現在も十分広く立派なお庭が残ります。広々としたロビーからの眺めも◎!

…実は訪れるまではそんなに古い庭園とは知らず(昭和の創業時のお庭かと)。その広さや、実際に年数を重ねないと出ない雰囲気で「めちゃくちゃ良いお庭じゃん…」と思った訳ですが、なんだか直感的に「弘前の庭園と似ているなぁ」と感じた。“大石武学流”では無いのだけれど、平庭の池泉式/橋の渡し方/苔むした雰囲気/モミジやイチイ、刈り込みの感じ…など。

先述の、近隣の国指定名勝庭園『香雪園』は弘前の近代の旧邸宅に庭園を残している京都の庭師・辻地月の作庭。時期的にも、香雪園に辻地月が関わったのと松岡庭園の作庭時期は近いなぁ…と思ったら、北海道新聞の記事によるとやっぱり辻地月の設計と言われているそう!『香雪園』の中でも書いたけれど、京都の庭園には名前が残らないけれど現代まで立派な庭園が3つも(それ以上?)保存されている辻地月という人物がとても興味深いし、函館と弘前の庭園カルチャーの繋がりも面白い…。

松岡庭園は2024年に作庭100周年を迎え、啄木亭さんでは特設サイトも準備、また様々なイベントが開催されたそう(ビアガーデンなど)。文化財クラスの日本庭園でもなかなかこんな「庭園100周年」でイベント打ったり祝われていないかもしれない…!歴史がありながらも非・文化財庭園だけれど、それでも「歴史も含め愛されている」庭園。(ちなみに生垣のドウダンツツジは函館市保存樹木に指定。庭園も名勝でもおかしくない…)

尚、冒頭で「宿泊者じゃなく日帰り入浴でも散策可」と書いたけれど、客室からの俯瞰した庭園の眺めは宿泊者のみ。3階部分にも客室から眺められる屋上庭園があります(これは創業時の作庭)。それ以外にも、最上階には茶室『松風庵』(現在は主に休憩所として利用)を始め、ホテル内には“庭園的”なしつらえが各所に。ぜひ函館旅行の際には宿泊利用してみて。

(2025年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

函館市電「湯の川温泉」電停より徒歩5分

〒042-0932 北海道函館市湯川町1丁目18-15 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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