
昭和の人気小説家・吉川英治が自ら設計した旧邸“草思堂”と青梅の自然に囲まれた庭園。建築家・谷口吉郎が設計のモダン建築も!国登録有形文化財。
吉川英治記念館(旧吉川英治邸)草思堂庭園について
「青梅市吉川英治記念館」(よしかわえいじきねんかん)は東京都青梅市にある、大正時代〜昭和時代に活躍した小説家・吉川英治の記念館。2023年に4棟が国登録有形文化財となった古民家/近代和風建築「旧吉川英治邸(草思堂)」と昭和を代表する建築家のひとり・谷口吉郎が設計の「展示室」、そして吉川が暮らした頃から残る庭園で構成されます。
ずっと行きたいと思っていた吉川英治記念館…2026年春に初めて訪れました。そして期待以上に素晴らしかった…。
代表作『宮本武蔵』『三国志』『新・平家物語』などの歴史小説で今日の大衆の日本史観にも大きな影響を残した、大正時代〜昭和時代の小説家・吉川英治。
青梅のこの地には昭和の戦時中、1944年(昭和19年)に疎開・移住(それまでは東京・赤坂に住まいがありました)。現在の国登録有形文化財「旧吉川英治邸」は元々はこの地域で養蚕を営んだ旧家・野村家のお屋敷で、江戸時代末期の土蔵と明治時代に建てられた長屋門・主屋・洋館が残ります。吉川が書斎とした洋館も野村家の時代に建てられたもので、「青梅の養蚕農家」という言葉のイメージとは異なる?モダンな姿を残します。
その洋館が目立ちますが、吉川英治自らが設計して改修した主屋「草思堂」がまたかっこよくて…。玄関の洗い出しのたたきやツルッとした石畳。玄関の先の囲炉裏にある、半月のような円窓。玄関の隣の応接室も元々は店の間的な空間だった所を和洋折衷の「近代数寄屋」風に改修した空間。それぞれが吉川自身のこだわり。北側の勝手口にも伽藍石?を作り替えた手水鉢の置かれた、近代東京で暮らした文人好みの邸宅の顔…といった趣き(『旧朝倉文夫邸』等のような)。表のファサードは農家だけど、裏に行けば行くほど「近代数寄屋建築」の顔に移り変わる…。
吉川家は9年5ヶ月この青梅で過ごし、その後は都内(品川区)へ転居し晩年を迎えますが、氏が亡くなられた後の1977年(昭和52年)に公益財団法人吉川英治国民文化振興会によって青梅の旧宅地に記念館が開かれました。(2019〜2020年に掛けて記念館や資料が青梅市に寄贈され、現在は青梅市立の施設となっています)
約5,000坪の敷地の大部分が「庭園」。吉川のもう一つの書斎、10畳+10畳の大広間からは正面に大きな紅しだれと斜めに成長しているマツの姿が眺められ、縁側に出ると正面や右手側に青梅渓谷の山々の風景・借景が眺められます。この植栽もきっと吉川が意図した/好んだものだったんだろう。
丘を利用した芝のお庭の先にあるのが「展示室」。こちらは1977年の記念館開館の為に作られたもので、設計を手掛けたのは世界的建築家・谷口吉生さんの父としても知られる谷口吉郎。この記念館に谷口吉郎さんの建築があると事前に知らず、その特徴的な照明を見て「え、まさか!?!?」となった…。『赤坂迎賓館 和風別館』を思い起こす昭和の和モダンな建築で、表はRC造だけれど、屋根は木材・壁面には大谷石…と自然の素材も贅沢に使われています。(ちなみに大谷石は洋館の基礎にも使われている)
そんな建築内部はもちろんカッコ良いのですが、展示室の周囲の庭園がまた良い…吉川が愛でた椎の木を中心とする草思堂庭園の一部に溶け込んでいるけれど、遊歩道ともども展示室を作った際におそらく改修された空間。谷口吉郎さんとタッグを組んでた造園家としては昭和の東京を代表する造園家・岩城亘太郎さんが居ますが(先述の『赤坂迎賓館 和風別館』)、この庭園もおそらくその様な著名の方がされたんじゃないだろうか…。
谷口吉郎も吉川英治と生前から親交があったほか、同じく青梅渓谷に疎開した川合玉堂とも交流し合い、長屋門にかかる看板の筆は東山魁夷である…など、昭和の日本の歴史的なアーティストたちの息吹が感じられる空間がこの「吉川英治記念館」。文学以外の建築やアート好きな方もぜひ訪れてみて。
(2026年4月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR青梅線 二俣尾駅より徒歩15分
JR青梅駅より路線バス「柚木」バス停下車すぐ
JR青梅駅より約5km(駅前にレンタサイクルあり)
〒198-0064 東京都青梅市柚木町1丁目101-1 MAP
投稿者プロフィール

- Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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