有斐斎弘道館庭園

Yuhisai Kodokan Garden, Kyoto

江戸期を代表する儒学者・皆川淇園が開いた学問所をルーツとし、取壊しの危機を乗り越えた数寄屋建築と庭園。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

有斐斎弘道館について

「有斐斎弘道館」(ゆうひさいこうどうかん)は江戸時代中期の儒学者・皆川淇園が京都に創設した私塾・学問所の跡に残る数寄屋建築。『京都を彩る建物や庭園』に認定されている建造物と庭園が残ります。
2019年の「街かどミュージアム」の対象施設だったことで知り、初めて訪れました!常時公開施設ではありませんが、頻繁にイベントが開催されてます。

皆川淇園とは。自分も「名前は見たことあるかも…」ぐらいだったので簡単に説明。

●江戸時代中期の京都を代表する儒学者
●3,000人も門弟がいた
●中には平戸藩主・松浦静山、丹後宮津藩主・松平宗允、膳所藩主・本多康完、亀山藩主・松平信岑といった大名勢も含まれ、身分・宗派問わずその教えが支持された
●絵画にも優れ、円山応挙に師事し、与謝蕪村長沢蘆雪とも交流があった

そんな淇園が文化3年(1806年)に開いたのが弘道館。淇園自身はその翌年に亡くなり弘道館で教鞭を取った期間は短かったそう。建物も幕末の大火で一度は焼失しており、現在残るのは明治時代に復元、その後昭和に一部増改築されたもの。それでも茶室「有斐斎」や表千家八代・啐啄斎好みの茶室の写し「汲古庵」など各所から古い面影を感じられます。あと円山応挙の書画の展示も。
ちなみに道路に立つ“皆川淇園弘道館址”の石碑は大正時代のものだそう。

そんな歴史的建造物も2009年にマンション建設により取り壊しの危機に。その中で現在の館長・濱崎加奈子さん(伝統文化研究家・歌人・京都観光おもてなし大使)を中心として研究者、学者ら有志による保存活動で現在まで残り、2013年からは公益財団法人として運営されています。

自分が今回訪れた時は『京菓子「万葉集」デザイン公募展』というイベントが開催。アイデアに溢れたカラフルな京菓子のデザインが楽しかった。
学問所だった「弘道館」の設立背景にならって学問・文化サロンとして施設運営されており、それ以外にもお茶会、能楽体験、花街文化体験、歴史や文化を学ぶ講義、そしてお庭の手入れ体験…などなど様々なイベントが開催されています。京の文化を学べるサロン――素敵なコンセプトだなあ。

そしてその庭園は苔の美しい茶庭。一面の苔の中に飛石と5つの蹲居、石灯籠が配されています。庭園に関する詳細の説明はないのですが、建物西側の待合の前に大きな木の根が見えるのは近代からその樹が植わっていた名残とされるので…明治に再建された頃に出来たお庭なのかな。
近隣の『京都府公館庭園』や『御所西平安ホテル』も素敵だけれど、これまた違うタイプの美しい庭園…!アプローチの石畳・延段と苔も素敵です。

2019年で弘道館が再興されて10周年ということで、再興に携わった方々のインタビューが公式サイトで公開されています。『京の学びとは』みたいなことを色んな視点で語られていて面白いので、併せてどうぞ!

弘道館再興10周年記念サイト

でも、京都に限らず各地域に日本文化が根付いていたわけだから――こういう読み物、もっと色んな地域から発信されるといいな。文化財・古民家を残し続けるというのはその地域ならではのストーリーを残し続けるのと同意なのだから。弘道館、次回は講義などの体験型イベントで訪れたい!

(2019年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

京都市営地下鉄烏丸線 今出川駅より徒歩9分、丸太町駅より徒歩10分
最寄りバス停は「烏丸下長者町」バス停 徒歩5分

〒602-8006 京都市上京区上長者町通新町東入ル元土御門町524-1 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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