旧矢掛本陣 石井家住宅

Kyu-Yakage-Honjin Ishii Residence Garden, Yakage, Okayama

国選定重要伝統的建造物群保存地区の町並み・矢掛。西国大名やかの篤姫も訪れた本陣の上段の間から眺める“嵐山”が借景の庭園。国指定重要文化財。

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旧矢掛本陣 石井家住宅について

「旧矢掛本陣 石井家住宅」(きゅうやかげほんじん いしいけじゅうたく)は国選定の重要伝統的建造物群保存地区「矢掛町矢掛宿」の町並みの代表的な商家/建築で、主屋をはじめ11棟が国の重要文化財に指定。参勤交代の藩主など要人の為の上段の間から眺められる、“嵐山”を借景とした庭園があります。

ローカル線の井原鉄道の駅から徒歩10分程、2020年に重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選定された岡山県・矢掛の古い町並み。現代には幹線から外れましたがかつては山陽道(西国街道)の宿場町として栄え、約1kmの区間に江戸時代~近代の古い町家/商家/そしてレトロな建築がズラリと並びます。ちなみに江戸時代初めにこの矢掛を含む備中国を治めたのは庭園でも有名な小堀遠州。遠州の書状にも矢掛は登場したとか。

そんな矢掛宿には大名や幕府役人など要人が宿泊所・休憩所とした本陣と脇本陣が江戸時代の姿のまま現存。いずれも国指定重要文化財で、『本陣と脇本陣が共に重要文化財クラスで現存』しているのは日本全国で見ても矢掛だけ!と言う貴重な場所。そんな宿場町の中央寄りに位置する間口の大きなお屋敷が「旧矢掛本陣石井家住宅」。

石井家は酒造業を営むかたわら、本陣や大庄屋をつとめ矢掛の町の中心人物として町の発展に貢献。11棟の国重要文化財の建築には、江戸時代末期に再建された主屋/御成門/座敷のほか、本業のための酒倉/絞り場/麹室なども含まれます。酒倉/裏門/西倉が最も古く江戸時代中期の建築。

要人を迎え入れた「座敷」棟には上段の間があり、ブドウとリスをモチーフとしたとても精巧でカッコいい欄間の意匠が残ります。この本陣には九州や中国地方の大名(萩藩主・毛利家など)や、薩摩藩から徳川将軍家に嫁いだ篤姫が江戸に向かう途中に宿泊された記録が残されているそう。

そんな座敷棟から庭園(中庭)を眺めることができます。3本横並びのマツをを中心に、苔の中のツツジの刈り込みに飛び石などで構成されるシンプルな庭園。短冊石の感じは同じく岡山県の国重要文化財の古民家『犬養木堂生家』にもあるこの地域の商家の庭の特徴?(この座敷には犬養毅の書も。)
借景となっている山は「嵐山」。京都の影響でその名が付いた…かは不明ですが、この借景が庭に奥行きを持たせています。

1,000坪(約3200平方メートル)の広大な屋敷内にあって中庭はすごく広いというわけではないものの、敷地奥の裏門付近には現代に商売(酒屋)では使われなくなった?広い空きスペースがあり、そこには新たにちょっとした新たな花園も設けられています。

近年は町や村全体をホテルに見立てたまちづくりをする“アルベルゴディフーゾ”(まちごとホテル)の取り組みでも注目を集め、無住となっった古民家を宿泊施設としてリノベーションされている矢掛。先述の「嵐山」は夜にはライトアップされるなど、まさに「町まるごとホテル」を体現。
なお町並みからは少し離れていますが、矢掛には岡山県指定名勝の文化財庭園『大通寺庭園』も。合わせてチェックしてみて。

(2018年5月、2023年9月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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