徳正寺 茶室“矩庵”

Tokushoji Temple Tearoom "Kuan", Kyoto

京都の非公開寺院にある藤森照信のユニークな茶室建築の初期作品は現代京都の日本画家・秋野不矩の子と共作した“矩庵”。フジモリ流の露地/茶庭も楽しい…!

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徳正寺 茶室「矩庵」について

【通常非公開】
「徳正寺」(とくしょうじ)は京都の繁華街・四条通を少し下った四条富小路にたたずむ非公開寺院。浄土真宗本願寺派の本山にも関連する「大谷道場」をルーツに持つ歴史ある寺院で、その境内奥には建築史家・藤森照信が設計を手掛けた茶室“矩庵”と庭園があります。

これまでも長野県・茅野の『フジモリ茶室』(空飛ぶ泥舟・高過庵・低過庵)や滋賀県・近江八幡の『ラ コリーナ近江八幡』など藤森照信さんの建築を紹介してきました。
一風変わった茶室建築を多く手がけている氏が唯一、茶道の本場・京都に作った茶室建築がこの矩庵”。通常非公開ですが、2023年9月に行われたお茶のイベント『ティーエレメント茶会』に参加し初めて見ることができたので紹介!

まずお寺の歴史について。創建は桃山時代の1593年(文禄2年)。開基・祐誓の妻は戦国大名・浅井長政の妹・妙正で、長政の菩提所としてその法号にちなんで当初は「徳勝寺」と名付けられました(後に徳正寺に改称)。1600年の関ヶ原の戦いを経て徳川家康に世の実権が移った後、『二条城』の築城や『知恩院』の拡張工事に伴って現在地に移転。また室町時代に願知により建立された『大谷道場』(をルーツに持つ「勝久寺」)の歴史を引き継ぐことになり、当初はこの地に大谷道場の旧御堂が移築されたそう。

そんな由緒ある寺院と藤森照信との縁は日本画家・秋野不矩の存在。
静岡県天竜市(現・浜松市)に藤森照信さんが建築を手がけた『秋野不矩美術館』が開館したのは1998年。そしてこの徳正寺は秋野不矩さんの子・秋野等さんが当時住職をつとめられ、2003年に両者によってこの茶室“矩庵”が建築されました(“矩庵”も“不矩”の矩をとったもの)。クレジットは建築と庭園の設計・監理:藤森照信/建築施工:秋野等、縄文建築団/造園施工:藤森照信、秋野等、覚元造園土木。

当時の建築雑誌・GAで《歴史家として知っていたから、既存のレッテルに対する恐れはなかった》と語った、自由な発想から生まれた煎茶のお茶室「矩庵」は、氏のユニークの茶室の中でも2作目の初期作品。またクローズアップされるのは建築ですがその茶庭/露地も藤森流。草が茂るアーチが庭門…?飛び石と並行している、角のある植栽は…龍?
重森三玲が『東福寺 龍吟庵』で表現した龍の姿とまた別のベクトルで、しかし「他で見ない」龍の表現はめちゃくちゃ面白い…(龍じゃなかったらごめんなさい)。そして茶室の中はもちろん素敵!

矩庵も素晴らしいけれど、ご本堂の前からはじまる延段〜本堂脇にある六角堂や靴脱石も実はユニークなデザインで気になる。ぜひアートファンなどにイベントで訪れて欲しいお寺…!

(2023年9月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

阪急京都線 京都河原町駅 12番出口より徒歩1分
京阪本線 祇園四条駅より徒歩10分
最寄りバス停は「四条河原町」バス停 徒歩5分

〒600-8051 京都市下京区富小路通四条下る​徳正寺町39 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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