秋野不矩美術館 茶室“望矩楼”

Akino Fuku Art Museum Tearoom, Hamamatsu, Shizuoka

天竜二俣出身の日本画家・秋野不矩の作品の世界観を表現した、藤森照信の初期の建築作品。2018年にはツリー型の新作茶室“望矩楼”も。

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秋野不矩美術館 茶室“望矩楼”について

「浜松市秋野不矩美術館」(はままつしあきのふくびじゅつかん)は現・浜松市天竜区二俣町出身の日本画家・秋野不矩の作品を中心とした展示が見られる美術館。その建築は藤森照信内田祥士による設計で、藤森照信さんの建築家としての初期の作品の一つ。2018年には茶室“望矩楼”が新たに登場しました。

これまでも長野県・茅野の『フジモリ茶室』(空飛ぶ泥舟・高過庵・低過庵)や滋賀県・近江八幡の『ラ コリーナ近江八幡』などを紹介している通り、藤森照信建築ファンです。自分が「建築を見る」ことのきっかけになったのはこの方の建築であり、この秋野不矩美術館!

前述の2つ程「園地・ランドスケープ」って感じではない(と思い込んでた)ので紹介してなかったけど、数年間行っていなかった間に茶室“望矩楼”が加わってたのでこれを機に紹介します。

旧・静岡県磐田郡二俣町(後の天竜市二俣町)に生まれ、20代前半の頃は京都画壇・西山翠嶂に師事、その後は京都を拠点に昭和〜平成年代に活躍した秋野不矩。この美術館が当初建った天竜市(→浜松市に吸収合併)の名誉市民であるだけでなく、京都市立芸術大学の名誉教授もつとめた京都でも文化功労者として表彰。晩年には文化勲章も受章されました。

その晩年の1998年(平成10年)に地元・天竜市に開館したのがこの秋野不矩美術館。特徴的なのはその外観。一応中は鉄筋コンクリート造らしいのだけれど、土塀って感じの漆喰や地元の天竜杉をふんだんに使った自然風な建築で自然の山の中腹に溶け込んでいます(コンセプトは「秋野不矩作品との調和」)。

近年では“木目を見せる自然風の建築”って増えてきているけれど、平成のこの頃ってもっとコンクリート!人工的!近未来の!みたいなものの方が主流だったと思うので(浜松で言うとアクトタワーとか)、この美術館や掛川の『ねむの木こども美術館 どんぐり』は自分の中ではすごくセンセーショナルだった。
コンクリートの基礎部分?も外は杉が張り巡らされ、空中へせり出されているような姿は懸造の寺院建築のようでもあるし、古民家のような梁がある内装や白亜の展示室も◎。

そんな秋野不矩美術館の開館20周年を記念して2018年に完成した茶室“望矩楼”(ぼうくろう)。『藤森照信展』の開催に合わせて建築されたこの新作茶室は「高過庵」「茶室 徹」などに続くツリーハウス風茶室で、地元の木材(天竜杉・檜)を用いているだけでなく、外壁に使われている銅板は地元の小中高生が加工や取り付けにも協力。

藤森さん曰く“イノシシのような”天竜の森の生き物をイメージされているそうだけど、古代の高床式住居のようでもあるしUFOのようでもある。茶室の中から一望する二俣の街の眺めはまた良いんだろうなぁ。いつか内部公開があれば訪れたいお茶室…!

(直近では2016年9月、2022年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

天竜浜名湖鉄道 二俣本町駅・天竜二俣駅より徒歩12分
遠州鉄道 西鹿島駅より路線バス「二俣仲町」バス停下車 徒歩7分

〒431-3314 静岡県浜松市天竜区二俣町二俣130 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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