京都タカシマヤ ダイニングガーデン“京回廊”

Kyoto Takashimaya Dining Garden”Kyokairo”, Kyoto

建築家・安原三郎がデザインを手掛けたフロアで鑑賞できる“浮かぶ坪庭”と、石彫家・和泉正敏のアトリエ発の“石の庭”。

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京都タカシマヤ ダイニングガーデン“京回廊”について

「京都タカシマヤ」(きょうとたかしまや)は京都の中心部・四条河原町の交差点に建つ、京都を代表する百貨店。建築家・安原三郎が設計/デザインを手掛けた7階のレストランフロア“ダイニングガーデン 京回廊”には“浮かぶ坪庭”をはじめ複数のコンセプチュアルな“庭”があります。

2021年の“庭納め”はこちらでした。庭園というよりは“インテリアデザインとしてのお庭作品”だけれど、自分的にはストーリーがあって紹介。

日本を代表する老舗百貨店の一つ・髙島屋。その歴史をさかのぼると1831年(天保2年)に京都・烏丸松原の地に初代飯田新七が古着木綿商“たかしまや”を創業したのがはじまり。現在は本店を大阪に、フラッグシップ店を東京・日本橋に譲りますが、京都店も四条河原町の現在地での歴史は70年超と古い。

2006年にリニューアルした7階のレストランフロア。たん熊本家、本家 尾張家、田ごと光悦舗、三嶋亭…などなど京都の老舗/有名店が揃うこのフロアは建築家・安原三郎の監修により、共用部だけでなく各店舗の雰囲気も“和モダン”な統一感がもたらされている。

■浮かぶ坪庭
エスカレーターを上がると目の前に(頭上に)現れるのが“浮かぶ坪庭”。京町家でよく見られる坪庭をフロア中心部に配することで、このレストランフロアが“京都ならではの空間”ということを表している。(町家の庭というより禅寺の坪庭、といった印象ではあるけど)
なお訪れる時間により天井からの自然光の感じが変わります。

■光の庭
レストランフロアと催事場の境目にあるのが“光の庭”。アクリル棒と照明の光によって、美山の茅葺きの集落の氷柱をイメージ。

■水の庭
2つあるエレベーターホールのうち片方にあるのが“水の庭”。ガラスアートによって、春に京都・北山の岩肌で見られる雪解け水の輝きを表現。

■石の庭
もう一つのエレベーターホールにあるのが“石の庭”。鎮座する四国の銘石・庵治石のオブジェ“掬月石”を核として、ベンチや壁面にも迫力ある石が用いられている。

“浮かぶ坪庭”よりも最初にこの空間とオブジェを見て「うお!?」と思って――そして安原三郎さんの解説文を見たら、《石のアトリエ(和泉石材)で見つけたものである》とあって。

『石のアトリエ』は世界的芸術家:イサム・ノグチの制作パートナーでもあった石彫家・和泉正敏さんの制作アトリエ。
安原さんは『建築人2012年7月号』で影響を受けた人物にイサム・ノグチを挙げ、そしてその出会いは和泉さんへ会いに訪れたこと、また個人邸“石壁の家”(設計・石井修)で一緒に仕事をされたことなどを語られています。

今年は東京都美術館での特別展『イサム・ノグチ 発見の道』関連で名前を見掛ける機会が多かったのに、惜しくも9月に逝去された和泉正敏さん。
個人的に、2021年の年始に丹下健三『旧香川県立体育館』『観音寺市斎場“燧望苑”』と和泉正敏さんによる2つの石庭を見に訪れた。そして一年の最後に珍しく足を踏み入れた髙島屋のレストランフロアで氏の作品に出会い、なんだか少し導かれた気持ちになったのでした。

(ちなみにこの秋は和泉正敏さんの遺作とも言える彫刻作品や庭園を見に行ったので、これも後日紹介予定。)

(2021年12月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

阪急京都線 京都河原町駅より直結
京阪電車 祇園四条駅より徒歩5分
京都市営地下鉄烏丸線 四条駅より徒歩10分
最寄りバス停は「四条河原町」バス停下車すぐ

〒600-8520 京都府京都市下京区真町52 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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