三田村氏庭園

Mitamura House Garden, Echizen, Fukui

“越前和紙の里”に残る国指定名勝庭園。まるで京都――と感じさせる石組と借景の美しい築山泉水式庭園。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

三田村氏庭園について

【3日以上前に要予約】
「三田村氏庭園」(みたむらしていえん)は越前和紙の生産地である今立五箇地区に江戸時代に作庭された回遊式の築山林泉式庭園で、2015年にに選ばれました。2019年春に初めて伺いましたが素晴らしい庭園だった!
見学には3日以上前の予約が必須。(※先方の都合で希望日に見学できるとは限りません。またメールは見られない時があるとおっしゃっていたので、メールフォームでの申込と併せて電話をしておくと確実です。)

越前市には約4年ぶりに訪れました。越前市の中心地・武生駅から東へ約7〜8kmにある「越前和紙の里」。前回そこから約3km程の場所にある国指定名勝庭園『城福寺庭園』には行ったんだけど――この三田村氏庭園は国名勝庭園になったばかりで見学できるかを把握していなかった…!
見学は数日前までに要予約というのもあり、今回の北陸旅行での最大の目的地はここでした。前回武生に訪れた時と同様、観光案内所でレンタサイクルをして向かったのですが、昼間で晴れてたのに急に天気が崩れて――レインコートを調達しながらどーにか時間どおりに到着。(一応路線バスもあります)

三田村氏庭園のある「越前製紙」さんは1338年の創業。これは室町幕府初代将軍・足利尊氏が征夷大将軍に命じられた年…!
紙漉きを生業としていた三田村家の先祖・道西掃部が越前国守護・斯波高経の命により漉いた御教用紙のクオリティが高かったことからお墨付きを得て、斯波氏・朝倉氏の元で越前国での御用紙職に。
その後この今立五箇地区は良質な紙の生産地区として知られることとなり、三田村家はその元締め的な地位で生産・販売の独占権を得て、朝倉氏を破った織田信長、そして天下を引き継いた豊臣秀吉、徳川家康の息子で福井藩主となった結城秀康、更に江戸幕府の公式紙職人に選ばれ地位を築きました。明治維新でその権益がリセットされてからは、いち生産者として現在に至ります。

三田村家の住宅と工場の一角にある庭園は江戸時代に作庭されたもので(年代も聞いた気がするけど失念…)で、大徳山など三方の山の借景と石組が素晴らしい庭園!また訪れた時はちょうど枝垂れ桜が色づいていて――この北陸旅で初めて色づいた桜を見たのも良かったな〜。
福井県には色々な庭園があるけれど――前述のように中央権力と繋がりがあった三田村家のこの庭園は、ベタな表現をすると『京都の名園を見ている』よう。京や近江との文化的な繋がりも強かったはず――そんな風に思うのは、パンフレットにも載っている明治時代初めの庭園の彩色鳥瞰図に『銀閣寺庭園』の「向月台」のような台形が描かれていることからもそう感じる。

またこの庭園と併せて寄りたい場所があった。“紙の神様”岡太・大瀧神社(14〜16枚目。なお元はだったそうです)。江戸時代の天保年代に再建された意匠の素晴らしい社殿は国指定重要文化財。
この地域は中世から由緒ある越前和紙の生産地としての歴史を持ちつつ、岡太神社・大瀧神社の門前町のような雰囲気もあり――町並みもとても良かった。三田村氏庭園に関する公式の紹介はあまり無いのですが、その中で少ない記事である越前市の観光案内サイトの下記特集ページに三田村家のご当主のインタビューも載っています。

■千三百年大祭記念・「紙と神」特集 越前市観光サイト|和紙、打刃物、箪笥、手仕事のまち

この記事をアップしようと本庭園の見学申込みページへ行った時以来アクセスしたら

本宅の工事に伴い庭園への通路が塞がれているため現在見学は行っておりません。

というメッセージが。最近追加されたのか元からあったかの記憶が曖昧なので…見学希望の場合は電話で確認するのが宜しいかと思います。30箇所近くの福井の庭園を見て回った中で、最も良かった場所の一つ!

それでも石組の一部が崩れ、その維持の為の費用の捻出も難しい――という点が悩みのタネとおっしゃられていた。この名園がより地域に愛されることを願って――。ちなみに観光案内所でお話を伺ったら、越前市・武生も海外からの観光客も最近増えているそうで、その主な目的はこの近辺の名産品である和紙や刃物の買い付けだとか。それと併せてこの庭園や、建築としても非常に美しい岡太神社・大瀧神社を観てもらう――というルートは結構良いんじゃないかな〜と思ったりする。

(2019年3月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR北陸本線 武生駅より約8km(駅前観光案内所にレンタサイクルあり)
武生駅より路線バス「和紙の里」バス停下車 徒歩約10分

〒915-0234 福井県越前市大滝町12-5 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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