三養荘(旧岩崎久彌別邸)庭園

Ryokan Sanyoso Garden, Izunagaoka, Shizuoka

伊豆を代表する名旅館、そのルーツは三菱財閥総帥・岩崎久彌の別邸…新館は昭和の巨匠・村野藤吾建築や、京都の名庭師・小川治兵衛作庭の日本庭園も。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

三養荘(旧岩崎久彌別邸)庭園について

【宿泊利用者向け】
「三養荘」(さんようそう)は静岡県伊豆の国市の温泉郷「伊豆長岡温泉」(古奈温泉)の旅館で、伊豆を代表する名旅館の一つ。そのルーツは昭和時代初期に造営された三菱財閥の三代目総帥・岩崎久弥の別荘で、その建築が「三養荘(旧岩崎久彌別邸)」として国登録有形文化財。庭園は近代京都の名庭師・小川治兵衛(植治)の作庭。昭和時代末期に増築された「新館」は昭和を代表する建築家・村野藤吾の最晩年の作品としても知られます。

建築・庭園はともに宿泊者向けの公開ですが、2026年6月の1ヶ月限定で「日本庭園カフェ」が開催。国登録有形文化財の本館でカフェを楽しんだ後は庭園の散策が楽しめるプランです。詳しくは公式サイトをご覧ください。自分も利用したので改めて紹介!(※2017年頃まで「日帰り入浴+庭園散策プラン」がありましたが、現在は終了)

約1,300年ほど前に開湯され、平安時代末期には源頼朝も湯治などで入湯したと伝わる伊豆長岡温泉郷「古奈温泉」。その狩野川のほとりで約42,000坪の広大な面積をほこる名旅館・三養荘。その歴史について。
その前身は三菱財閥の三代目総帥・岩崎久弥(創業者・岩崎弥太郎の長男)が1929年(昭和4年)に造営を開始した別邸。ちなみに本邸はジョサイア・コンドルの洋館で知られる東京の『旧岩崎邸庭園』。三養荘が造営された頃の久弥は三菱の社長はすでに岩崎小弥太に譲っており、岩手・小岩井農場の運営に注力。安らぎの場を求め、すでに鉄道も開通していた伊豆長岡を別荘地としました。

現在、本館玄関・茶室棟/本館居間・書斎棟/本館客間棟/本館中央棟/本館待合/本館露地門/御幸の間の7棟が国登録有形文化財。このうち御幸の間以外が当初(岩崎久彌の別邸として)建てられた数寄屋風造りの和風建築。本館の北側に離れて建つ懸造りの和風建築「御幸の間」は戦後に昭和天皇・皇后両陛下のご宿泊の為に新築されたもの。

時系列が前後しますが、戦後すぐの1946年(昭和21年)に岩崎久弥の手を離れて西武グループ総帥・堤康次郎の所有に。軽井沢に「プリンス・ホテル」が誕生した同年の1947年に三養荘も旅館として開業しました(またその直後に昭和の著名な政治家・後藤新平の別荘にあった田舎家が三養荘に移築)。前述の「御幸の間」の竣工以降、昭和〜平成年代に掛けて皇族も幾度とご宿泊される御用達の旅館に。

そして1988年(昭和63年)に昭和の巨匠・村野藤吾(村野・森建築事務所)の設計による新館が増築。新館と言っても現代数寄屋風のフロント棟だけではなく庭園側にある離れ(現・プリンスバケーションクラブ三養荘)やラウンジ「葵」も氏の作品で、特にラウンジ葵は三養荘と同じく最晩年の作品(遺作)となった新潟の『天寿園「瞑想館」』と雰囲気が似ている。村野さんは『高輪プリンスホテル』を皮切りに、プリンスホテル系列も複数手掛けられています。

庭園について。その主庭園は本館の東側に広がる池泉回遊式庭園で、作庭は近代京都の名庭師・小川治兵衛。年代的には七代目小川治兵衛(植治)の作庭で、こちらも氏にとって晩年の作品の一つに。また七代目の門下で国指定名勝『鳥潟会館』を手掛けた庭師・粕谷幸作も作庭に携わったとのこと。

本館居間から緩やかな芝生の斜面と池泉があり、その先に雄大に伊豆の山々を借景にのぞむ庭園。岩崎久弥は当初は京都にも別荘を計画していたそうですが、この山々の姿は京都・東山にも通ずる、そしてその広々とした空間が小岩井にも通ずる事からこの場が選ばれました。その沓脱石には鞍馬石の巨石が用いられたり、そして小川治兵衛が好んだ沓脱石が一部置かれていたり…と「京都の小川治兵衛風」を感じさせる面がある一方で、庭園北側は伊豆らしい岩肌を活かした滝石組、中国風の石橋や変わった石塔など「施主の趣味」が感じられる面も。(玄関入ってすぐお茶室がある作りや、待合からは一度芝生のエリアを経て露地門がある位置関係なども、京都のお屋敷とは異なる施主の趣味!といった雰囲気)

なお、新館の方にも池泉庭園があり、ロビーや通路から眺められます。こちらも山裾から豊富な水を活かした池泉式庭園。こちらは旅館の旧図には描かれていない、新館と共に作庭された庭園で…作者は不明ですが、雰囲気は『ザ・プリンス京都宝ヶ池』とも似ている(同じ作庭家なのではないでしょうか)。
色々ごちゃごちゃ書いたのですが、新館の佇まいが本当にかっこいい、そして庭園も本当に広大で最高…。お近くの方も期間限定の「日本庭園カフェ」はぜひ訪れてみて。

(2017年11月、2026年6月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

伊豆箱根鉄道駿豆線 伊豆長岡駅より徒歩20分
伊豆長岡駅・沼津駅より路線バス「長岡総合会館前」バス停下車 徒歩9分
※伊豆長岡駅前・三養荘前にシェアサイクルのポートあり

〒410-2204 静岡県伊豆の国市ままの上270 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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