池上本門寺庭園“松涛園”

Ikegami Honmonji Temple Garden "Shotoen", Ota-ku, Tokyo

東京を代表する寺院の歴史的庭園が年1回の特別公開。大名茶人・小堀遠州作庭と伝わる“松濤園”。園内の勝海舟/西郷隆盛の会見所は東京都指定文化財。

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池上本門寺庭園“松涛園”について

【通常非公開/例年GW頃に特別公開】
「池上本門寺」(いけがみほんもんじ)は東京を代表する寺院の一つで、日蓮宗の大本山。江戸幕府2代将軍・徳川秀忠により寄進・建立された五重塔や江戸時代後期建立の多宝塔が国指定重要文化財。そして通常非公開の庭園『松涛園』は桃山時代〜江戸時代初期の代表的な作庭家/大名茶人・小堀遠州の作庭と伝わります。また、勝海舟と西郷隆盛による、江戸城無血開城を決めた際の会見所の跡が『南州海舟評議の処』として東京都指定文化財(史跡)。

通常非公開ながら、歴史的にも規模的にも東京、江戸の代表的な寺院庭園『松濤園』。例年(コロナ禍を除く)、数日間の特別公開があり、近年は5月のGWに一般公開されています(※以前は9月初旬)。
なお、特別公開期間外でも併設されている『朗峰会館』の人形町今半で食事をすることで窓越しに眺めることはできます(園内を歩くことは不可)。

池上本門寺の歴史について。鎌倉時代の1282年(弘安5年)9月、病気療養のため身延山を離れ常陸国へ向かった日蓮宗開祖・日蓮聖人。その道中、武蔵国・池上の郷主・池上宗仲の館で最期を迎えました(入滅)。亡くなる前に池上の地に創建された『長栄山 本門寺』がそのルーツ。

以来700年以上に渡り日蓮聖人ご入滅の霊場として、また江戸時代には『身延山久遠寺』とともに日蓮宗の中心寺院として位置づけされ、また江戸時代には将軍・徳川家や大名・加藤清正らの祈願寺として繁栄。

昭和年代には太平洋戦争の空襲により数多くの建造物を焼失する被害を受けますが、五重塔や鎌倉時代作の日蓮聖人坐像は焼失を免れ現在では国指定重要文化財に。
そして、再建された伽藍も新しいからそんなに…という事かと言えばそうではなく、大堂の天井画は近代日本画家の巨匠・川端龍子(同じ大田区にアトリエを残す)による遺作であったり、コンクリート建の巨大な寺社建築としてなど新たな歴史の価値が込められています。なお焼失前の大堂は名奉行として有名な大岡越前守が普請奉行を担当。

そんな広大な境内地の北部分に位置するのが本坊の奥庭だった庭園『松濤園』。こんな大きな庭園が隠されていたのか…!と驚く広大な池泉回遊式庭園は広さ、4千坪(13,000平方メートル)。寺院の庭園としては浅草の『伝法院庭園』と並び東京でも屈指の広さで、その作庭は江戸時代の代表的な作庭家・小堀遠州の造園と伝わります。

武蔵野台地の南の端に当たるこのエリアは小さな坂と谷が多いですが、その地形を活かした自然の雑木林エリアと三方から池を見下ろすことのできる庭園で、その池も湧水によるものとか。
昭和の再建の際など改修を経ている為、現在は所々新しい姿にはなっていますが、メインの池にある洲浜、そしてふんだんに巨石が使われた渓谷部分など、地形は違えど京都の小堀遠州作の『京都仙洞御所』を思い起こす庭園です。

その庭園の北の高台部に残るのが東京都指定史跡の『南州海舟評議の処』。1868年、勝海舟西郷隆盛による「江戸無血開城」の交渉はこの庭園の四阿(あずまや)で行われました。当時の建物は残りませんが、並ぶ形で茶室『浄庵』が1992年(平成4年)に新築されています。

茶道遠州流の祖でもある小堀遠州の意向もあり、当初の庭園にも茶室が多かったそう。戦災などで当時のものは残りませんが、浄庵も含め新築/移築された茶室が現在も4棟あります(その点も仙洞御所と似ている)。
中でも歴史があるのは、庭園の入り口近く、向かって右手の小高い場所にある『根庵』と『鈍庵』。近代を代表する茶人/数寄者・益田鈍翁(益田孝)のお抱え陶芸家だった大野鈍阿の旧邸宅・茶室で、裏千家より寄贈されこの庭園に移築されました。

大名庭園とはまた異なる魅力ある池上本門寺の庭園。ぜひ公開された際には足を運んでみて。

(2018年5月、2023年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

都営地下鉄浅草線 西馬込駅より徒歩10分強
東急池上線 池上駅より徒歩15分

〒146-0082 東京都大田区池上1-2-1 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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