龍子記念館・龍子公園Ryushi Memorial Museum / Former Kawabata Ryushi Residence, Ota-ku, Tokyo

東京に残る“庭屋一如”…近代日本画の巨匠・川端龍子の個人美術館と、龍子自身が設計した近代数寄屋建築が最高な旧宅/アトリエと庭園。

庭園ギャラリーGarden Photo Gallery

龍子記念館・龍子公園について

「龍子記念館」(りゅうしきねんかん)は近代〜昭和時代に活躍した画家・川端龍子の作品を展示する個人美術館。その向かいの『龍子公園』内には川端龍子自身が設計した旧宅・アトリエと回遊式庭園が残されています。(龍子公園は開館日の10時/11時/14時からの時間限定でガイド付きで見学)

「吉田五十八が好きならきっと好きだと思う」とだいぶ前からオススメされていた川端龍子旧邸…2022年7月に初めて訪れました!

この大田区・西馬込〜南馬込〜山王のエリアは近代には文化人や実業家・政治家の邸宅が多く立ち並び、中でも文人が多かったことから“馬込文士村”と呼ばれました。
3年前に同エリアの『山王草堂記念館(蘇峰公園)』を訪れて紹介しているけれど、その時に本当は龍子公園も寄りたかったんだよな〜でもちょうど11時〜14時の間で…「まあ遠くない未来にまたこの辺は来くるだろうしな」と思ってから3年掛かった…。

近代日本画の巨匠のひとり・川端龍子。当初は洋画・油絵を志向した龍子ですが、28歳の時に日本画に転向。そのきっかけは1913年(大正2年)に渡米した際にボストン美術館で見た日本美術に感動したこと。(身近にあるものの魅力って身近ゆえ気付けない…ってことは現代でもよくあるよね…)

旧宅が残る馬込の臼田坂下に転居しアトリエを構えたのは1920年(大正9年)。この地で長い時間を過ごし、晩年に文化勲章受章と喜寿を記念して1963年(昭和38年)に設立されたのが『龍子記念館』。当初は川端龍子が設立した社団法人青龍社の運営でしたが、後に記念館・旧宅・作品が大田区に寄贈され、1991年(平成3年)から大田区立龍子記念館になりました。

記念館の向かいにあるのが大田区立の『龍子公園』。公園って言うとある程度自由に出入りできて開かれてるものを想像するけど、この龍子公園は『川端龍子旧宅および庭園』と言った方がイメージが湧きやすいかもしれない…?園内には旧宅(主屋)/画室/それらを繋ぐ庭園が当時のまま保存されています。

この地に転居した当初の主屋は戦時中の空襲でほぼ全壊してしまったため、現在残る主屋は戦後の1948年(昭和23年)から再建したもの(画室“御形荘”は幸運にも焼失を免れた戦前の建築)。建築の設計/デザインが趣味だったという川端龍子…記念館と同じく龍子自身が設計したこの昭和の和風建築が…最高!

まずアプローチ…太い幹の竹を揃えた竹垣+直線的に屈曲した石畳が独特かつ前衛的な“和”のデザイン。そして長屋門風の待合と旧宅が迎えてくれる。
主屋やアトリエの軒、室内の天井ではこれでもか!というぐらい網代編み。玄関の戸も網代編みにも似た「卍」のようなデザインで、龍子のお気に入りの文様だった。室内に上がることはできず外から見るのみですが、う〜ん近代数寄屋建築最高だ〜!京都の数寄屋建築の名作『四君子苑』を昭和にアップデートしたかのような感じ(四君子苑も一部は吉田五十八が昭和に増築してるけど)。

主屋の一角の持仏堂の中に展示されているのが国宝『風神雷神図屏風』の作者・俵屋宗達が描いたと伝わる『桜芥子図襖』(現在展示されているのは複製)。その襖の先には龍子の持仏が安置されていました。このうちの一つが国指定重要文化財の平安時代の仏像「毘沙門天立像」。現在は『東京国立博物館』に所蔵されています。

そんな旧宅と画室を繋ぎ・囲んでいる庭園。まず主屋の前/アプローチの脇にあるのが“爆弾散華の池”。空襲で失われた旧・主屋の跡の湧水を活かし造成されたこの池は、爆撃の爆風で飛び散る庭園の草花/野菜を描いた作品『爆弾散華』にちなんで命名されました。

主屋(持仏堂)〜画室の間に広がる庭園は、アプローチとは異なる不均等な飛び石を歩きながら、小川のある自然の風景を感じる庭園。龍子が泊まり込みで作品制作に励んだ伊豆・修善寺の風景を表現したものとも。
この“自然風の庭園”の姿は先述の『蘇峰公園』とも似ている…気がする。現在は住宅街の一角となっている龍子公園ですが、かつて龍子が転居した頃は自然の姿を残す郊外でした。

今回は夏場に訪れたので全体的に草が生い茂っている姿になってしまったけれど…龍子の作品のモチーフにもなった四季折々の花木が植栽された庭園。次はもう少しスッキリしてるであろう春や紅葉の季節に訪れたい…でもその青々とした自然の姿でもこの建築の“庭屋一如”を十分に堪能!

(2022年7月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

都営浅草線 西馬込駅より徒歩14分
JR京浜東北線 大森駅より徒歩20分
JR大森駅より路線バス「臼田坂下」バス停下車 徒歩2分

〒143-0024 東京都大田区中央4丁目2-1 MAP

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