安田財閥・安田善助の邸宅をルーツとし、“鬼十則”を定めた電通・吉田秀雄も所有した近代の庭園と茶室“松滴庵”。
品川区立品川歴史館庭園・茶室“松滴庵”について
「品川歴史館」(しながわれきしかん)は品川区立の歴史博物館。かつて近代にはこの地に安田財閥・安田善助が邸宅をかまえ、当時作庭された庭園の一部と茶室“松滴庵”が現在も残ります。
2021年8月、新型コロナ以降で初めて東京へ。主な目的はパビリオン・トウキョウでの『茶室 五庵』や『kudan house』だったけど、ここも「次回東京行く時に必ず行こう」と約2年間思い続けていた場所でした。
というのも、自分が東京から転居前に最後に訪れた庭園が『大田区立山王草堂記念館』、ここからそう離れてもいない。その時に「まあいいや次回で、向こう着くの遅くなりそうだし」と思ったんだけど…そこから2年越し!
文字通り、品川区の歴史に関する展示や資料が保存されている品川歴史館。1985年(昭和60年)に開館する以前は、この地は昭和初期に建立された安田財閥・安田善助の邸宅があり、戦後はその和風建築を残したまま電通による『吉田秀雄記念館』として用いられました。“鬼十則”で有名な方ですね、知ってますよ…。
庭園に面した形で残る“書院”は安田邸や吉田記念館として用いられた和風建築の部材を再利用して復元されたもの。
またその書院と向き合う茶室“松滴庵”(しょうてきあん)も安田善助邸の時代に建立されたもので、そのモチーフは現在トーハク(『東京国立博物館庭園』)に残る、武将茶人金森宗和好みの茶室“六窓庵”。松滴庵には『根津美術館』の根津嘉一郎や後の首相・高橋是清も訪れたそう。現在は老朽化につき、結界の外からの外観の見学のみ。
茶室の露地庭に加えて、芝庭と2本の枯流れが主体の庭園も当時から残されたもの。『菊池寛実記念 智美術館庭園』に似た、戦前東京スタイルを感じさせる庭園。
庭園の片隅にある水琴窟も安田邸時代に造られ、歴史館の建設の際に発見されたのを活かされたもの。そしても一つ、建設の際に発見されたのが5~7世紀の竪穴住居跡(大井鹿島遺跡)。その展示が庭園の一角に残されているのもここならでは…。
館内の展示では東海道・品川宿の復元模型や、徒歩5分の場所にある国指定史跡『大森貝塚』に関する展示も。
個人的に面白かったのは大名屋敷関連…熊本藩・戸越屋敷(現『戸越公園』)の庭園も含めた絵図や、現『御殿山庭園』の一帯にあった徳川家の『品川御殿』について。残念ながら松平不昧の『大崎園』に関する展示はなかったけど、資料を所蔵はしてそうだなあ…。“映える施設”ではないけど、庭園のみならず資料を探しにまた訪れたい場所!
(2021年8月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR京浜東北線 大森駅より徒歩13分・大井町駅より徒歩15分強
京急本線 立会川駅より徒歩15分
品川駅・大井町駅・大森駅・池上駅・蒲田駅から路線バス「鹿島神社前」バス停下車 徒歩2分
〒140-0014 東京都品川区大井6丁目11-1 MAP