八勝館“春を愉しむ会”Hasshokan Garden (Spring), Nagoya, Aichi

2020年国重要文化財に。建築家・堀口捨己の名建築を残す名古屋の名料亭は庭園も美しい、正に“現代の桂離宮”。

庭園ギャラリーGarden Photo Gallery

八勝館“春を愉しむ会”について

「八勝館」(はっしょうかん)は大正時代創業の名古屋を代表する料亭。その中の部屋の一つ“御幸の間”は建築家・堀口捨己の設計によるもので、完成翌年に日本建築学会賞を受賞、『DOCOMOMO Japan 日本の近代建築100選』の最初の20選に名を連ねた昭和を代表する和風建築。
2020年には建築9棟(御幸の間棟・正門・西門・中門・玄関棟・松の間棟・新座敷棟・菊の間棟・田舎家)が国指定重要文化財にも選ばれました。

「はい優勝!!!!!今年のベスト庭園はここ!!!!!」と紹介した、2020年夏に“御幸の間見学会”で初めて訪れた時の記事は↓。

>> 八勝館“御幸の間”

尾張徳川家の祈願寺として繁栄した『八事山 興正寺』の門前、かつては三河・遠州・伊勢・志摩・飛騨など八州を望む景勝地だった丘陵地に、材木商・柴田孫助の別荘として造営がはじまった“八勝館”。その後の1925年(大正14年)に料理旅館として創業し、北大路魯山人や茶人&実業家・松永耳庵などの文化人に愛され、昭和皇后陛下の行在所にもなった名古屋の名料亭。

で、庭園ではなくその建築で名前を知られる場所だけれど――素敵な和風建築を支える、彩るのが庭園。八勝館は約4,000坪の敷地全体が回遊式庭園のようになっています。

その建築の中を見たい!という方向けには、(通常の料亭利用やブライダル以外には)例年夏に開催の『八勝館 見学会』がオススメなのですが、既にそこに参加した・また八勝館の空間を味わいたい・でも複数名での料亭利用は難しい…という自分向き!のイベントが3月下旬~4月の平日に開催された『春を愉しむ会』
“御幸の間”の中は見られないけど、「八勝館の庭園空間」をまた味わいたかった自分にとっては最高のイベントだった!!

“御幸の間”をはじめ八勝館の建築の多くを手掛けた堀口捨己は日本庭園協会で理事もつとめた庭園研究家でもあり、氏が作庭を手掛けた東京の『菊池氏茶室庭園』(*非公開)は国登録の文化財になっています。

なので当然ながら、八勝館の庭園にも氏の意向が反映されているのではないか――(特に御幸の間・新座敷棟・菊の間周辺)。実際の所は文献は無いので知らんけど――それは二の次で、良く手入れが行き届いてて苔もきれいだし、庭石のカラフルさ、石畳・延段の良さ…名建築&美食に見合う美しい庭園空間。

なお現在見られる“流れ”の庭園を作庭は、近代東京の有力作庭家・飯田十基の下で学んだ福住庭園(旧・株式会社フクズミ)の福住豊さんによるもの。この福住さんはタレント・ダレノガレ明美さんの父親でもあり、ダレノガレさん自身も「八勝館のお庭を作ったのは父と兄」と呟いておられる

■御幸の間(1・7~12枚目)
広い敷地の中に点在する部屋数は12。その中でも目玉の“御幸の間”は1950年(昭和25年)に名古屋で国体が開催された際に、昭和天皇皇后両陛下の御宿泊所として建造(増築)されたもの。

そのモチーフとなっているのは『桂離宮』!建築内部にもその影響・オマージュが見られるけれど、美しい庭園とのバランスがまた“現代の桂離宮”と感じるポイント。

■田舎家(14枚目)
庭園中央に鎮座する茅葺屋根の“田舎家”は江戸時代初期に甲賀に建てられた古民家を昭和2年に移築させたもの。現在では離れ座敷の一つとして人気があるそう。

敷地上部からはじまり、この田舎家の前をカーブしてゆく“流れ”。銘石による滝石組を経て、この水が最終的に“御幸の間”の庭園に至っています。

■新座敷棟(17~18枚目)
今回のイベントでも食事(点心)の場になったのは、“御幸の間”から8年後、1958年(昭和33年)に堀口捨己により増築された新座敷棟。こちらも御幸の間とともに重要文化財に選定。

今回も参加費は安くはないのだけれど――
今は数百円で見られる江戸時代~近代の“回遊式庭園”も、かつては「見て回って終わり」じゃなく、美味しい食事を楽しむ、お抹茶を楽しむ。そんなテーマパーク、フェス会場だったんだろうなあーみたいな追体験を八勝館の空間は味あわせてくれる。“大人の庭園ファン”に知ってほしい世界なんです…!

一方で初めて訪れた時も書いたけど、周囲(=八勝館の敷地)にはマンションやイオンの一部が建っていて、多少なりとも現代的な建築が視界に入る。紅葉がない春は夏よりその姿がくっきりと見える。
中には「景観が…」みたいなことが引っかかってしまう人が居るかもだけど、その賃料によって料亭文化や名建築が維持されている側面もあると思う。責めるのではなく、京都ですら閉店が相次ぐ“料亭”の文化を後世に残すために、周囲を誘おう、盛り上げよう――って方向に行けたらなあって。

(2022年3月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

名古屋市営地下鉄鶴舞線・名城線 八事駅より徒歩3分

〒466-0834 愛知県名古屋市昭和区広路町石坂29 MAP