八事山興正寺 竹翠亭庭園

Koshoji Temple Garden, Nagoya, Aichi

国重文の五重塔も残る名古屋の大寺院の茶室は、“海運王”日下部久太郎の邸宅だった近代和風建築。苔庭も。

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八事山興正寺“普門園”“竹翠亭”について

「八事山興正寺」(やごとさんこうしょうじ)は名古屋市の東部・八事にある高野山真言宗の別格本山寺院。江戸時代には尾張徳川家に厚く信仰され、江戸時代後期に建立された五重塔は国指定重要文化財。(東海地方に現存する唯一の木造五重塔なんだそう)
全体的に新しい境内には“普門園”という現代風の石庭と、茶室“竹翠亭”でも枯山水庭園が見られます。

2020年8月、堀口捨己の名建築『八勝館』へ行った折、道路を挟んで隣接するこのお寺にも初めて訪れました。八勝館の敷地の高台部にかつてあった御亭(おちん)は興正寺のものだった、という一文が八勝館に関する本にあった。

現在も広大な境内をほこる興正寺の創建は江戸時代初期の1686年(貞享3年)。なので比較的新しいといえば新しいのですが、開山の天瑞圓照和尚が尾張藩二代目・徳川光友に帰依され、それ以後尾張徳川家の祈願所として繁栄。江戸時代中期には尾張徳川家六代目・徳川継友、七代目・徳川宗春により諸堂が建立。“尾張高野”とも称されたとか。

で、事前に「庭園がありそうだな」と思っていたのは本堂裏の“普門園”だったのですが。「庭園を拝観したいのですが」と申し出たところ案内されたのは最奥にある茶室“竹翠亭”。普門園はどこから進んでいいかわからないまま予約の時間に近づいてしまったので今回はほぼ竹翠亭だけの紹介なのですが、実はこちら由緒ある近代和風建築で…!むしろこちらを見られてよかった。

現在、興正寺の茶室となっている“竹翠亭”は近代に“海運王”とも呼ばれた日下部久太郎(十六銀行の取締役でもあった)の邸宅として建築されたもの。
元々は日下部久太郎の出身地・岐阜県岐阜市にあり岐阜市都市景観重要建築物でもあったそうですが、日下部家による現地での保存が困難になった結果、名古屋の興正寺に移築されることに。お茶室の屋根が完全に近代建築だなと違和感あったけど、そういうことだったのか…!

重要文化財級だった…という数寄屋風建築は意匠も素晴らしいし中庭の苔庭も美しい。写真を見る限り元の邸宅の庭を復元はせず(元の邸宅には“虎の児渡し”のようなまた別の枯山水があったっぽい)、移築した2008年に新たに作庭されたものですが、『建仁寺潮音庭』のような感じで良いし、茶室の軒下の瓦の使い方とかも現代風でこれはこれでかっこいい。

この日いただいた黒糖のお茶菓子と冷抹茶がこれまた美味しくて…!!!ここはぜひまた行きたい。
ちなみに神戸にある『舞子ホテル』、いつか泊まってみたいなあと思っている近代建築なのですが、そこも日下部久太郎の神戸別邸だったんですね…現在休業中(コロナ前から休まれた)ですが、復活した際には訪れたい。

(2020年8月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

名古屋市営地下鉄鶴舞線・名城線 八事駅より徒歩4分

〒466-0825 愛知県名古屋市昭和区八事本町78 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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