そのルーツは近代日本画家・伊東深水の自邸/アトリエ“月白山荘”。東京の梅の名所庭園は大正〜昭和の茶室・数寄屋建築や茶庭にも注目!
池上梅園について
「池上梅園」(いけがみばいえん)は梅の名所として知られる東京・大田区立の公園。そのルーツは近代日本画の巨匠・伊東深水の自邸兼アトリエ『月白山荘』。当時の建物は現存しませんが、伊東深水のアトリエを設計した建築家・川尻善治の設計による数寄屋建築「清月庵」や茶室「聴雨庵」、その露地・茶庭などが見られます。
都営地下鉄浅草線の終点・西馬込駅から徒歩約10分。東京を代表する大寺院のひとつ『池上本門寺』の境内の北西に位置する池上梅園。
その名の通り梅の名所として有名で、言い換えると「梅園」のイメージが強くそれ以外の時期の注目度はさほど高くないかもしれません。しかし実は前述通りの近代の有力者ゆかりの庭園スポット!
横山大観、竹内栖鳳、山元春挙、橋本関雪、川合玉堂、上村松園らとともに名前の挙がることの多い近代日本画家・伊東深水。氏が昭和初期に自宅兼アトリエを構えたのがこの池上の地。現在の公園の北部分、現在は400本近い梅やツツジの植わった斜面を庭園として生かしたその邸宅は『月白山荘』と呼ばれていました。
しかしその邸宅は太平洋戦争の空襲により焼失。その土地は築地の料亭経営者・小倉誠氏の所有となり、現在茶室などがある南部分が拡張され別邸として用いられました。氏の没後、1975年(昭和50年)にこの地を庭園として残すことを条件に東京都に譲渡。後に大田区に移管され、大田区の花である梅を主体としたの公園(庭園)として開園しました。
■清月庵
公園入口から奥へ向かって最初にある和風建築が茶室「清月庵」。元からこの地にあったものではなく開園後に移築され、平成元年より貸茶室として利用されています。
元は冒頭に名を挙げた建築家・川尻善治の自邸の離れとして大正時代に建築されたもの。川尻家は池上本門寺の門前に広大な土地を有し料理屋を経営する一家だったそう。昭和後期にマンションが建設されることとなり、保存運動の末に川尻善治にもゆかりのある月白山荘の跡である池上梅園に移築されました。
■聴雨庵
そんな清月庵の並びにある茶室「聴雨庵」。明治〜大正時代、近代の有力実業家のひとり・藤山雷太を父に持つ政治家・藤山愛一郎の自邸にあった茶室で、1983年(昭和53年)にこの地に寄贈、移築。太平洋戦争の戦時中には米内光政・岡田啓介・末次信正らと共にこの茶室で東条内閣打倒密議が行われたという由緒のあるお茶室。3畳・7畳・9畳と3室あり茶庭も新緑が美しい!
■和室棟
そして園内で最も南にあるのが「和室棟」。3棟の中で唯一個別の名がない「和室棟」ですが、小倉家の別荘時代に建てられた主座敷であり、その前に広がる池泉庭園や公園南部にある元の別邸時代の正門・薬医門からの距離などから「昭和の和風別荘」の面影を最も感じられます。薬医門を起点に庭園をめぐるとよりお屋敷時代のお庭を感じられるかも。
梅以外の時期はまさに「穴場」と言える東京の庭園、ぜひ色んな季節に足を運んでみて。
(2023年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
都営地下鉄浅草線 西馬込駅より徒歩8分
東急池上線 池上駅より徒歩15分
JR大森駅より路線バス「本門寺裏」バス停より徒歩3分
〒146-0082 東京都大田区池上2丁目2-13 MAP