“関西建築界の父”建築家・武田五一の関西以外ではレアな邸宅建築。洋館も附属する和洋折衷の近代和風建築はアプローチ/前庭も独特なデザイン!
旧春田鉄次郎邸について
【施設利用者向け】
「旧春田鉄次郎邸」(きゅうはるたてつじろうてい)は名古屋市の町並み保存地区『白壁・主税・橦木町並み保存地区』(通称・文化のみち)に残る大正時代の近代和風建築。名古屋市景観重要建造物。近代の関西/京都を代表する建築家・武田五一の設計と伝わります。
現在1階部分は創作フランス料理のレストラン『Restaurant Dubonnet』(レストラン デュボネ)として営業。2階部分と1階の一部を隣接する『旧豊田佐助邸』にてスタッフの方に希望をお伝えする形で見学することができます。
名古屋のシンボル『名古屋城』の東に位置するお屋敷街「文化のみち」について。かつて江戸時代には中級武士による武家屋敷街が広がり、明治維新後にはその町割りを残しながら近代産業の起業家や陶磁器の販売/輸出を営む陶磁器商が集い・住む町へと変化/成長を遂げました。
幸運にも戦災被害を逃れたこの一帯は現在の名古屋市の町並み保存地区『白壁・主税・橦木町並み保存地区』に指定。武家屋敷時代の面影を残す塀から近代のレトロ建築が数多く残り、あわせて『徳川園』(徳川美術館)に至るまでの約3kmの道が市民により「文化のみち」と呼ばれるようになりました。
1924年(大正13年)に建てられたこの旧春田鉄次郎邸も町並み保存地区の伝統的建造物・景観重要構造物の一つ。 春田鉄次郎氏について。『文化のみち橦木館』の井元為三郎と同じく陶磁器商/貿易商として財を成した人物。大洋商工株式会社を創業し、最盛期にはアメリカ/ヨーロッパ/オーストラリアへと販路を拡大し、ニューヨークやボストンにもオフィスを構えていたそう。
そんな氏がアメリカへ渡る船の中で出会ったと言われているのが建築家・武田五一。「関西建築界の父」とも言われる京阪神地区には欠かせない有名建築家ですが、“東海地方の個人邸”としてはレア/貴重な建物がこの旧春田邸。
長い前庭(アプローチ)から始まり、前方に洋館、奥に和館という和洋折衷な近代和風建築。その室内も近代建築らしいこだわりの意匠が数多く見られ、和館も玄関の天井は洋風の壁紙だったり、一部は戦後の米軍に接収され将校が暮らした際に改変された姿がそのまま残るなど、部屋によって様々な表情を見せるのが楽しい。2階の和室は武田五一が関わった京都の邸宅『八竹庵』(旧川崎家住宅)に似た雰囲気を感じる…。
お庭は前述の前庭と、洋館・和館の間にある白砂の枯山水庭園の2つで構成。そのお庭も決して広いものではありませんが、前庭の園路も和洋折衷の独特のデザインが面白い…。
ちなみに春田鉄次郎×武田五一のコンビがこの邸宅の後に手がけたのが『春田文化住宅』という集合住宅地。この春田邸の左隣、現在大きな結婚式場がある場所に、中庭をシェアした13戸の住宅があり、地元の学者や文化人が暮らしていたそう。そちらは残念ながら全て解体されてしまいましたが、この旧春田邸は末長く残されることを願いつつ、レストランも素敵なのでぜひ利用してみて。
(2022年7月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
名古屋市営地下鉄・桜通線 高岳駅より徒歩12分
名鉄瀬戸線 清水駅より徒歩10分強
JR名古屋駅より路線バス「東片端」バス停下車 徒歩5分
〒461-0018 愛知県名古屋市東区主税町3丁目6-2 MAP