八竹庵(旧川崎家住宅)庭園

Hachikuan (Former Kawasaki Residence) Garden, Kyoto

KYOTOGRAPHIEやGucciの展覧会でも話題に。近代関西の代表的建築家・武田五一も関わった洋館や京町家の庭も見所の近代和風建築。京都市指定有形文化財。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

八竹庵(旧川崎家住宅)について

【2022年より一般公開開始】
「八竹庵」(はちくあん)は京都の中心部、祇園祭では多くの“山鉾”が並ぶ新町通沿いにある京町家。近代京都を代表する建築家・武田五一の設計による洋間/洋室もある近代和風建築が「川崎家住宅」として京都市指定有形文化財。
そのお庭も建築と同じ、約100年近い歴史ある近代の日本庭園。主庭の紅葉が美しい時期に訪れました。その際の写真を追加して紹介。

かつて呉服商が数多く軒を連ねた京都の商業の中心地・室町通。その中でも随一の豪商と言われた綿布商・井上利助が1924年~1926年(大正13~15年)が住宅兼商談の場として建てられたのがこちらの町家。
中庭/茶室に面する露地/主屋・蔵の間の主庭…と複数のお庭を持つ、一般公開されている京町家の中でも大型な京町家であり、また規模のみならず前述の武田五一の他にも大工棟梁は数寄屋師・上坂浅次郎が担当/近代京都画壇の巨匠・竹内栖鳳デザインの、京都の東山連峰を抽象的に表現した欄間なども残ります。

昭和時代中期に、文化財名として名前の残る川崎家の所有となり、2018年までその本宅・迎賓館・ハウスミュージアム『紫織庵』として用いられました。

しかしそんな歴史と由緒ある京町家が2019年、新たに所有者となった東京の不動産会社による解体/取り壊しの可能性が報じられます。京都市から条例違反の警告文も発せられ、一時期は人の気配もなくその行く末が心配だったけれど――。

2021年夏には世界的ブランド・グッチが創設100周年を記念した体験型エキシビション『Gucci Bamboo House』が開催。そして2022年より京都の地場の企業「くろちく」の所有となり、一般公開や『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭』の拠点になるなど新たな形での場の活用がスタートしました。

お庭も前述の通り“主庭”“中庭”“露地”と複数の雰囲気を楽しむことができます。大きな紅葉の木がある主庭は大きな庭石や石造物も見所。
そして園路のある中庭に気になるパーツが縁側にひとつ。近代京都の代表的な作庭家・七代目小川治兵衛(植治)の手掛けた別の庭園:『白河院庭園』などで見られる特徴的な沓脱石(の小さい版)。文化財の説明板には七代目小川治兵衛とともに南禅寺界隈の別荘群を造営した京都商事株式会社・塚本与三次の名前も挙がっていて――武田五一もたびたびタッグを組んでいる。このお庭は小川治兵衛が関わっている…?かは不明ですが、同等の価値のあるお庭にきっと違いない…!

Gucci Bamboo House(2021)

2021年夏に開催された世界的ブランド・グッチが創設100周年を記念した体験型エキシビション『Gucci Bamboo House』についての記録も。
2年以上閉ざされていた前を通りながら「もう見れないのだろうか」と心配だった町家で、まさかそんな一流ブランドのイベントが行われることになるなんて…!

それにしてもなぜGUCCI…?という点について。GUCCIの創業の地・イタリアのフィレンツェは京都市と姉妹都市という縁があったことも企画に影響を与えていたそうで、展示の内装は“文化財の建築を傷つけない”為の配慮が全て施されていた。

この町家は洋間もある近代的な“和洋折衷”の空間。100年近く建つ現代から見れば“伝統的な京町家”の一例でもあるけれど、一方で竹内栖鳳による抽象的な欄間もや床脇のない床の間も必ずしも“伝統的なものばかりを踏襲した”のではない、斬新で攻めたデザインだったのではないか――そんな空間だから、“バンブー=竹”がテーマのインスタレーション展示やバンブーハンドルのバッグもオリエンタルな風味で合う。

建物と違って庭園は(歴史はあるけれど)文化財指定されていないために、この企画の際に“空間を演出する装置”としていっとき竹(や苔)が植えられたのも印象的でした。手掛けたのは東京を拠点とするユニット:BOTANICAL ARRANGEMENTS TSUBAKIさん。


敷地奥にある2つの蔵や、2階部分にある“祇園祭を楽しむための仕掛け”など、町家のたてものの中には他にも見所がいっぱい。見学の際には施設の方が解説してくださるので、説明がないと気づきにくい部分も色々知ることができます。ぜひ一度訪れてみて。

(2021年7月、2022年4月、2023年5月・12月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

京都市営地下鉄烏丸線・東西線 烏丸御池駅より徒歩5分
阪急京都線 烏丸駅より徒歩8分
最寄りバス停は「烏丸三条」「新町御池」バス停 徒歩5分

〒604-8205 京都府京都市中京区三条町340 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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