苔の里・叡智の杜Hiyou Koke-no-Sato Moss Garden (Forest of Wisdom), Komatsu, Ishikawa

粟津温泉の奥の小さな里山集落で育まれ続けてきた、一面の美しい苔庭――。隠れた苔の名所は日本最高級の苔庭。

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苔の里・叡智の杜について

「苔の里」(こけのさと)は石川県小松市の粟津温泉郷から3kmほど山間の細い道を進んだ先にある、人口が30人に満たない集落・日用町にある苔庭。その名前からしてきっと苔の美しい場所なのだろう――という想像はしていたけど、想像以上に広く美しい苔庭がそこにありました!2019年3月に初訪問、そして2020年9月に再訪。

2018年に初めて訪れて苔の美しさに感動した新潟県柏崎市の『貞観園』も“苔が育ちやすい”と言われる山間にありましたが、この日用町もそう。
この集落では昔から民家の裏庭に苔が自然と生育していたそうで、また気候のみならず生活の燃料として庭の落葉を集め、庭をきれいに保ち続けていたのも美しい苔が生え揃う要因の一つだったそう。そういった各々のお宅の庭を回遊・鑑賞できるよう整備されたのがこの「苔の里」。(なので公共の観光施設などではなく、現在も住民の暮らす私有地です)

この「苔の里」を訪れて感動した――その理由の一つに、やはりこの辿り着きづらい集落に存在すること――が一つ。これまで2回とも例によってレンタサイクルを利用して向かいました(粟津駅前のレンタサイクルは6年前に国名勝庭園のある『那谷寺』へ行った時にも利用。この苔の里から那谷寺までは約6km。あと粟津温泉郷の一部宿泊施設…2020年に宿泊した『法師』にもレンタサイクルがあります)。

粟津温泉郷からしばらくはほんとうに山間の細い道――車通りもない――そんな景色のゆるい坂道を登り続ける。途中、もう人が住んでいなさそうな家屋も見ながら――。そして少し広い通りが現れたら、そこが日用町。

(まあ、粟津温泉郷から車なら10分もしないで辿り着く道のりかもしれないけど(笑))
集落の真ん中を通るこの道はちゃんと広く整備されているけど、人の姿で賑わっているわけではない。そう、この「苔の里」は観光施設ではなく――ただただ、この集落の日常空間。

先の『貞観園』や京都の苔寺『西芳寺庭園』のように一つの日本庭園があるわけではない。けどこれだけずっと苔を眺めながら回遊できる庭園は、この苔の里が最大規模じゃないだろうか。人の声も車の音もしない――強いて挙げれば、風の音や鳥のさえずりは聞こえる。

道を渡ってこの集落を守るお社、日用神社にも苔庭が広がります。この写真のように、苔庭を拡大している・生育している様子も伺えますが――町おこしをしよう、観光名所にしよう――といった意図があるわけではなさそう。

現代において、市街地から離れアクセスしづらい、自動車無しでは暮らせない日用町は少子高齢化の進む集落。平日は路線バスもない(週末だけ観光客向け?のバスが1日2往復あるみたいでした)。
何もせずにこの美しい苔庭が維持され続けることはない――ということで、現在は住民の方々による「日用苔の里整備推進協議会」によって様々な試みが進められているようです。築100年以上の古民家(立派な庄屋屋敷風!)を改修した交流施設「Wisdom House」の運営や苔の里サポーター募集などなど。あと当然ながら、現在も地元の方によって苔庭のお手入れが続けられている。そうした人の存在なくしてこの苔庭は見られない。

この美しい苔庭――苔が好きな人、緑が好きな人には是非訪れてほしい。また庭園巡りで金沢を訪れる人が居たならば、この庭園はきっと穴場だと思うので絶対にオススメ――だけどこの美しい風景を維持するためには、あまり観光地として有名にならない方がいいのかなぁ、という気にもなる。
大勢の人がこぞって回遊して、マナーに反して苔の中に入って踏み潰されてしまったりしたら――と思うと元の子もない。(←でもバスツアーに組み込まれて好評を得たりもしているそうです、念の為。)
だけど苔の姿の持つ“侘び寂び”を存分に味わえる、最高に美しい空間――是非訪れて、マナーを守って鑑賞してほしい場所です。

(2019年3月、2020年9月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR北陸本線 粟津駅より約6km(駅前にレンタサイクルあり)
粟津温泉郷より約3km
【土日祝のみ】粟津駅より観光路線バス「日用苔の里」バス停下車すぐ(本数少ないので要確認!)

〒923-0324 石川県小松市日用町寅71番地付近 MAP