大聖寺藩3代目藩主・前田利直の藩邸内に作庭された池泉回遊式庭園と小堀遠州ゆかりの国重文の建造物。
江沼神社庭園・長流亭について
「江沼神社庭園」(えぬまじんじゃていえん)は江戸時代に大聖寺藩の陣屋(藩庁)のあった場所に残る池泉回遊式庭園で、加賀市指定名勝(「旧大聖寺藩邸庭園」とも言われます)。また神社境内にある「長流亭」も小堀遠州ゆかりの建造物として国指定重要文化財となっています。
加賀市と言えば加賀温泉。湖に溶け込むような大浴場のある谷口吉生建築の「片山津温泉町湯」を雑誌で見て衝撃を受けて、片山津温泉には2回程足を運んだことがありました。
これまでずっと加賀温泉駅が加賀市の中心だと思っていましたが――実は(?)歴史的には加賀市の中心は江戸時代には大聖寺藩の城下町だった大聖寺にある――ということを今回知った。加賀市役所、市民会館、図書館…といった公共施設も大聖寺駅付近にあるし、駅から10分〜15分歩けば城下町時代の町割りがよく残る町並みも見られます。
そんな大聖寺藩は加賀藩2代目藩主・前田利常の時代(江戸時代初期)に支藩として立藩されました。大聖寺藩3代目藩主・前田利直の時代の1709年に大聖寺城址の麓にあった大聖寺藩の陣屋内にこの池泉回遊式庭園と、同じく境内に残る「長流亭」が造営。前田利直は江戸幕府5代目将軍・徳川綱吉の側近を務め江戸に居る時間が長かったそうですが、現在は江沼神社の神苑となっているこの池泉回遊式庭園は兼六園の影響を受けたと言われます。
…比較できる程きれいな状態ではないけど…中の島に掛かる八ツ橋などは当時のものが残っているそうで、護岸や築山の石組は古庭園の面影を感じます。季節的にも今回はあまり見頃ではなかったけど…紅葉期が見頃だそう。
そして国指定重要文化財の「長流亭」は小堀遠州が設計したとも言われる…と言っても遠州が亡くなってから数十年も経ってる年代。何らかの設計書が残されていてそれに基づいて造営された…ということなら納得。ちなみにお隣・小松市の粟津温泉に遠州が立ち寄ったという温泉があったので、なんとなーく遠州と加賀の結びつきはあったんだなあと。社務所で受付をすれば内部が見学が可能(今回はだいぶ遅い時間だったので見れなかったけど)。
江沼神社そのものの創建は1704年、前田利直の邸宅内に菅原道真を祀る天満天神社を建立したのがはじめとされ、その後別の神社との合併を経て江沼神社となり現在では菅原道真とともに大聖寺藩初代藩主・前田利治が祀られています。そのほか境内には「日本百名山」の著者・深田久弥文学碑、竹径館(第14代藩主の居館)なども。
今回大聖寺を訪れたのは夕方の深い時間だったのでこの庭園と町並みを見ただけだったのですが、「深田久弥山の文学館」も気になるし、毎年春・秋に庭園の特別公開が行われている「山ノ下寺院群」も駅から徒歩圏内。次回は山ノ下寺院群の特別公開時期に訪れたい!
(2019年3月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)