まずは岡山市内・地域の方にふれて欲しいお屋敷・庭園…中国銀行“中興の祖”守分十の旧邸に作庭された回遊式庭園と茶室。【通常非公開】
中銀南方クラブ庭園について
【通常非公開】
「中銀南方クラブ」(ちゅうぎんなんぽうくらぶ)は岡山県に本店を置く地方銀行「中国銀行」の迎賓館。敷地内には中国銀行三代目の頭取・守分十の旧邸宅や庭園「洗心庭」、茶室「寿庵亭」があります。
JR岡山駅からは徒歩15分程、西川緑道公園沿いに歩くとたどり着く文化施設『吉備路文学館』の南側に道を挟んで隣接する和風建築――
以前から気になっていた中銀南方クラブ、一般には通常非公開ですが、地域の方々によるお茶会が年に数回開催されているとか。毎年12月第一週に開催されている表千家流の茶道教室主催の『クリスマスチャリティ茶会』に参加させていただいたので、その際見学した庭園の様子を紹介します。(吉備路文学館を初めて紹介した時に「元々は頭取の大邸宅とかだったのかなあと。」と書いてたのですが、その通りだった…)
守分十さんについて。初代頭取“大原財閥”大原孫三郎に仕えた後、昭和の戦後に30年以上の長期間に渡り頭取をつとめ「中国銀行中興の祖」と評された銀行家。地域経済に多大なる貢献を果たし、岡山市名誉市民、倉敷市名誉市民となっている一方で、自宅に茶室を構え「寿庵」の号を称した茶人でもありました。
このお屋敷が造営された年代の詳細は不明なのですが、1970年頃には完成済み。氏の死後数年を経て中国銀行の施設として活用されることになり、1994年(平成6年)に庭園の一角に四階建ての「中銀南方クラブ」メイン棟が竣工。設計/施工は藤木工務店さん。
敷地内をざっくり分けると…池泉庭園「洗心庭」を中心とした北部、メイン棟の建つ中央部、旧守分邸を中心とした南部…の3エリアに分けられます。が、お庭のゾーニングは更に分かれる。
●南側玄関~旧守分邸の前庭
●旧守分邸の主座敷から眺める主庭園(茶砂の中に飛び石が配された回遊式枯山水は岡山/倉敷の地域性が感じられる庭園。『旅館くらしき』等)
●主庭と同じ世界感を持ちながら北部へ至る庭園
●北部にある離れに面した池泉庭園「洗心庭」
●離れ~腰掛待合を繋ぐ露地庭
●北側玄関(勝手口)の前庭
「洗心庭」は西川から水を引き入れているもので、前述の吉備路文学館の庭園「北泉庭」~「前庭」を経てこの洗心庭へと水路が続いているそう。「地域で水を共有する庭園」は江戸期の城下町や、近代で言えば京都の“南禅寺界隈”でも見られますが、『昭和時代、一企業の建物同士の複数の庭園』というのは珍しくて面白い。
池泉庭園「洗心庭」の一角には彫刻家・柳原義達が作の守分十像が立ちます。一般の観光ではなかなか見る機会はないものの、『岡山後楽園』だけに留めるのはもったいない岡山市の庭園文化。地域の方に知って、ふれて欲しいスポット。
(2024年12月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)