旅館くらしき庭園

Ryokan Kurashiki Garden, Kurashiki, Okayama

倉敷美観地区にたたずむ江戸時代の商家建築…大原總一郎/芹沢銈介/棟方志功/司馬遼太郎らゆかりの名旅館。レストラン/カフェ棟から眺める美しい庭園“陽前の庭”も。

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旅館くらしき庭園について

「旅館くらしき」は国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている『倉敷美観地区』(倉敷川畔伝統的建造物群保存地区)の倉敷川べりにたたずむ旅館。『大原美術館』でも有名な実業家・大原孫三郎の子・大原総一郎も開業に深く関わった由緒ある宿で、ロゴのデザインは染色家・芹沢銈介。枯山水庭園“陽前の庭”があります。

江戸幕府の天領として形成された美しい町並み「倉敷美観地区」の倉敷川がカーブするそのほとり。そこに位置する白壁の伝統的な商家建築が「旅館くらしき」。元は江戸時代後期に砂糖問屋・河原家の店舗兼自宅として造営されたお屋敷で、その後継者が途絶えたことを機に大原總一郎をはじめとする地域の方々の後押しによって、1957年(昭和32年)に創業。

伝統的な商家から旅館へのリノベーションを手掛けたのは、地元・児島出身で後に『大原美術館分館』『倉敷アイビースクエア』『倉敷市庁舎』『千里阪急ホテル』などを手掛けた建築家・浦辺鎮太郎(日本建築学会賞大賞受賞)。大原總一郎の御用達的な建築家でもあり、倉敷の町並み保存に専門家として取り組んだひとり。

なお倉敷が古い町並み保存に精力的に取り組み始めたのが戦後の昭和20年代半ばから。地元や大原家からの後押しがあったこの旅館は町並み保存の一環で生まれたとも言えます(芹沢けい介が関わったのも大原家とのご縁からで、氏が手掛けたロゴデザイン12のうちの一つ)。その所有者として運営を任された畠山家は「倉敷町屋賞」の第一号受賞者となったそう。

《「良い宿」とは大きな旅館になる事でも、有名になる事でもなく、お客様が心より安らげ、旅に憩い、土地のぬくもりを感じる、あるがままの平凡な旅籠》という創業者の想いを引き継ぎ、現在も客室はわずか8室。
棟方志功司馬遼太郎と言った著名人も宿泊した名旅館…それゆえ宿泊利用は少々ハードルが高い。そんな方にはレストラン/カフェがオススメ。1971年(昭和46年)には洋風〜山荘好みの『自焙煎カフェ珈琲館』が増築。

そんなレストラン/カフェ棟の前に“陽前の庭”が広がります。江戸時代のお屋敷に元からあったお庭を、旅館としての開業時に手が加えられたのが現在のお庭。マツの木を中心として四季の草花が植わった回遊式枯山水庭園は、建築家の出身地・児島の『野崎家住宅』や、倉敷のお隣・早島の『いかしの舎』等でも見られるスタイル。

なお大原家と縁が深い庭師…というと京都の小川治兵衛(植治)。近くの『大原本邸』『新渓園』は七代目小川治兵衛の作庭録に残り、植治としては大原総一郎の自邸の庭園にも携わっています。この庭園はどうだったのかな…などと想像しながらぜひ鑑賞してみて。

(2023年9月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR山陽本線 倉敷駅より徒歩15分弱
倉敷駅より路線バス「大原美術館前」バス停下車 徒歩6分

〒710-0054 岡山県倉敷市本町4-1 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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