竹田嘉兵衛商店(竹田家住宅)庭園

Takeda Resicence Garden, Nagoya, Aichi

国の重要伝統的建造物群保存地区・有松で“有松絞”の祖の流れを汲む商家の近代和風建築。将軍・徳川家茂も訪れた茶室“栽松軒”や素敵な庭園も。名古屋市指定文化財。(通常非公開)

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

竹田嘉兵衛商店(竹田家住宅)庭園について

【通常非公開/イベント開催時に公開されることも】
「竹田嘉兵衛商店」(たけだかへいしょうてん)は国の重要伝統的建造物群保存地区・名古屋市有松で江戸時代から続く、有松を代表する商家。その建築が『竹田家住宅』として名古屋市指定有形文化財/都市景観重要建築物/日本遺産『江戸時代の情緒に触れる絞りの産地-藍染が風にゆれる町 有松-』の構成文化財。江戸幕府14代将軍・徳川家茂も訪れたと伝わる茶室『栽松軒』や茶庭も残ります。

書院/庭園/茶室は通常非公開ですが、2022年に開催された国際芸術祭『あいち2022』の会場として用いられた際の写真を紹介。主屋ではドイツを拠点とするアーティスト:プリンツ・ゴラーム、茶室ではメキシコ出身のアーティスト:ガブリエル・オロスコの作品が展示されました。

2016年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された名古屋市・有松の町並み。江戸時代初期の1608年(慶長13年)に東海道五十三次・池鯉鮒宿と鳴海宿の間の旧東海道沿いに尾張藩が新たに開いた集落で、一見宿場町のようだけどそうではなく。

やがて東海道を往来する旅人の土産物として、三河木綿の絞り染め「有松絞り」を施した手ぬぐいの販売がはじまり、有松絞りの広がりとともに街は発展。
近代〜昭和年代には卸売販売への業態転換などで更に発展し、現代では当時のような旅人の往来はないものの“有松・鳴海絞”を生産するブランド/メーカーの店舗がいくつも軒を連ねています。

そんな有松絞りを考案した“有松・鳴海絞りの祖”が集落が開かれた初期の住民の一人・竹田庄九郎。その流れをくむ商家が寛保年間に分家した「竹田嘉兵衛商店」(屋号・笹加)。
街道に面した虫籠窓のある主屋は江戸時代末期のものと推定されている伝統的な商家建築ですが、『あいち2022』で特別公開された書院座敷は明治〜大正時代に整備されたもので、大正ロマンを感じさせる洋間のある近代和風建築!設計は名古屋の茶家・吉田家三代紹清(吉田紹清)

そんな広間から眺める庭園も素晴らしい…京都の名石・鞍馬石みたいな巨大な沓脱石、庭園中央にある踏分石もかなり大きく、名石/巨石揃いなところから、建築とともに「笹加」の繁栄ぶりを感じさせる。あと建物と庭園の構造は同じ愛知県で街道沿いの『旧林氏庭園(一宮市尾西歴史民俗資料館)』を思い出す。

庭園の奥に茶室『栽松軒』とその露地庭園が。冒頭の通り14代将軍・徳川家茂も訪れたと伝わる茶室で、京都の数寄屋建築の巨匠・中村昌生さんの茶室の本の中でも紹介されています。6畳+8畳の座敷と小間で構成される茶室を中村昌生さんは《バランスのとり方が完璧》と評されています。
東京都現代美術館で個展が開かれるなど日本でも人気の現代アーティスト:ガブリエル・オロスコは今回、茶室にも欠かせない大工が用いる単位「尺」をモチーフとした作品を制作展示。

外観のたたずまいも建築の内部も庭園も茶室も全部素晴らしかった…。洋間には棟方志功河井寛次郎がこの竹田家を訪れた際の写真も展示されていました。時代を超えてワールドワイドなアーティストゆかりの場にもなった竹田家。イベントが開催される際にぜひ足を運んでみて。

(2022年9月、2023年3月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

名鉄名古屋本線 有松駅より徒歩4分

〒458-0924 愛知県名古屋市緑区有松1102 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
PICK UP / COLUMN
最新の庭園情報は約10万人がフォローする
【おにわさん】のSNSから。