“筑豊御三家”の一つ、炭鉱王・貝島家のお屋敷が“不易流行・工藝饗摯”をコンセプトに再生。福岡市登録文化財の近代和風建築と回遊式庭園。
旧高宮貝島家住宅 / 高宮南緑地 / 高宮庭園茶寮について
「旧高宮貝島家住宅」(きゅうたかみやかいじまけじゅうたく)はかつて炭鉱王/石炭王と呼ばれ財を成した「貝島財閥」貝島家の旧邸。大正時代に建てられた近代和風建築が福岡市登録文化財となっており、邸宅を囲むように庭園が広がります。
2005年に貝島家から福岡市に寄贈され、それ以降長らく非公開でしたが、2022年4月に修復/整備が完了し、都市公園『高宮南緑地』として開園。あわせて邸宅を活用する形でレストラン/結婚式場『高宮庭園茶寮』がオープンしました。
都市公園なので開園時間内は無料で園内を散策することができます(※ウェディングの時間内は中庭に入れない等、イベントによる制限あり)。
その歴史について。麻生家/安川家と共に“筑豊御三家”と並び称された貝島家。その祖・貝島太助の弟で貝島炭鉱の経営を支えた実業家・貝島嘉蔵の自邸として当初は福岡県直方市(貝島家の本拠)に1915年(大正4年)に建築され、その後1927年(昭和2年)に福岡市のこの地に移築されたのがこの邸宅。この高宮の地は博多・天神の繁華街からは離れていますが、市内の高級住宅地の一つだそう。
そのお屋敷は一部は老朽化で解体されたものの、主屋(約500平方メートル)と庭園の一角に茶室が残ります。主屋は25畳ある大広間を中心として、数寄屋風書院造りの部屋や洋間のある、福岡市内では有数の近代和風建築で、その設計・デザインには貝島嘉蔵自身も関与したとか。
現在、大広間や洋室、そして公園内に新築された迎賓館はウェディングやレストランなどパーティーの場として活用。その内装も文化財としての意匠は残しながらも『高宮庭園茶寮』のオープンに合わせてリデザイン。指定管理者「ポジティブドリームパーソンズ」の下でディレクション・デザインを担当したのは「丹青社」。また庭園部分は地元・福岡の「都市造園」が担当されています。
ただの雑木林と化していた――という所から蘇った庭園は主に4つのエリアに分かれています。大広間と茶房の前に広がる芝生が主体の「中庭」(※元の主庭?)、公園としての入口近くに広がる「主庭」、茶室まわりの露地庭、そして茶室や主庭から階段をくださった先、最も自然を残した「紅葉谷」。紅葉谷は水は流れていないものの、往時の立派な滝石組や池泉の跡が見られます。
地域の災害時の避難場所としても想定されている「公園」として、明るい庭園にリニューアルされながらも、他の炭鉱王の邸宅と同様に、庭石や石造物が立派でその歴史を伝えます。またカジュアルに楽しみたい人向けにはお茶と和菓子のセットをいただける「茶房」も。八女茶、知覧茶、佐賀茶と九州のさまざまなお茶を味わえるので観光の方にもオススメ!福岡の「新しい歴史的庭園」、ぜひ訪れてみて。
(2024年4月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
西鉄天神大牟田線 高宮駅より徒歩7分
JR山陽新幹線 博多駅より路線バス「野間四角」バス停下車 徒歩5分
〒815-0083 福岡県福岡市南区高宮5丁目16-1 MAP