旧安川邸

旧安川邸庭園について

「旧安川邸」（きゅうやすかわてい）は近代に炭鉱で財を成した炭鉱王／実業家・“安川財閥”安川敬一郎とその一族が暮らした旧宅で、明治時代〜昭和時代初期に整えられた近代和風建築と洋館、石蔵などが「旧安川家住宅」として北九州市有形文化財で、2022年4月より一般公開が開始されました。邸宅内ではカフェ『茶論 Salon du JAPON MAEDA』も営業中！

2020年に初めて訪れた国指定重要文化財の洋館『旧松本家住宅』（＊通常非公開／東京駅で有名な辰野金吾建築）。それに隣接するお屋敷が旧安川邸。その時にも公開へ向けた整備の様子が伺えたのですが、ついに2022年に公開開始…ということで初めて訪れました！

日本の近代化には欠かせなかった石炭・炭鉱。その炭鉱経営で財を成し、工業都市・北九州の礎を築き“筑豊御三家”に数えられたのが安川家。現在の東証上場企業「安川電機」の創業家でもあり、その始祖・安川敬一郎が明治時代後期から造営したのがこの邸宅。
なお『旧松本家住宅』を造営した松本健次郎は苗字は異なりますが安川敬一郎の息子。そんな縁もあり（？）現在の旧安川邸の事業主体は北九州市と安川電機ですが、旧松本家住宅を運営する「西日本工業倶楽部」が指定管理者として運営されています。

約13,000平方メートルの敷地をほこる旧安川邸。広い車寄せのある玄関から始まり、1938年（昭和13年）竣工の本館、1912年（明治45年）にこの地に移築された和風建築（大座敷）とそれに付属する茶室、石蔵、1927年（昭和2年）に竣工した洋館（＊外観のみ）とそれらを囲む庭園を見ることができます。

■本館棟（3〜5枚目）
1938年（昭和13年）竣工。旧松本邸や後述の洋館ほどコテコテの洋館ではなものの、後のモダニズム建築へと繋がるようなスタイリッシュな空間が味わえます。和洋折衷な応接間が素敵！

■大座敷棟・茶室（6〜8／12〜17枚目）
旧安川邸の中で最も歴史があるのが、1912年（明治45年）にこの地に移築された大座敷。この大座敷では庭園を眺めながら八女茶やスイーツを味わえるカフェ利用も！
邸内では安川家に残された美術品／工芸品／調度品なども見られるのですが、座敷に掲げられている「世界平和」の書は中華民国の政治家／革命家・孫文による筆。

個人的には茶室の前にある、ちょっと幾何学的で近代感のある露地がとても気になって…作風が同じく近代の炭鉱王『旧蔵内邸』の中庭に似ている。

■大座敷前庭園（9〜11／20〜23枚目）
パーティー向けの芝生の広場を主体として、枯流、滝石組などのある近代日本庭園で、滝や流れが描かれた昭和初期の古図をもとに今回のオープンへ向けて復元整備されました。緩やかな斜面には一面のツツジが植っていて、4月中旬〜下旬に向けて見頃を迎えます。

■洋館（18〜19枚目）
大座敷前庭園から見て、大座敷と並ぶのが1927年（昭和2年）に竣工した洋館。本館と比べるとこちらの方がレトロな雰囲気。洋館ながら庭園に面する部分には自然石の奇石を用いたつくばいがある、和洋折衷な空間を演出。

■石蔵（南蔵・北蔵）（24〜25枚目）
1912年（明治45年）に建築された2つの蔵は現在はギャラリーとして活用。その間に設けられた石庭はおそらく今回の整備で新たにしつらえられたもので、モダンな風を新たに吹かせている。

■中庭（26〜28枚目）
現在は裏庭っぽい雰囲気をかもす「中庭」。大座敷前庭園と比べると雑草の姿が目立つけれど、かつては一面の砂の鑑賞式枯山水って雰囲気だったのかな〜。

なおこの中庭から繋がってゆく敷地南部の「鐡の記憶広場」や「南側庭園」は現代的な雰囲気が漂う空間になっている（セラミック？ガラス？のベンチなども）。敷地南側にはかつては「旧二次本邸」がありましたが昭和後期に老朽化により取り壊されました。
そこから時を経ながら、広く公開／活用されることになった大富豪のお屋敷。新たな北九州の観光名所としても期待！

（2023年4月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。）