山王くらぶ

Sanno Club Garden, Sakata, Yamagata

大正ロマンを代表する画家・竹久夢二が逗留した茶室から眺める庭園も…明治時代に創業、かつて酒田を代表した料亭建築。国登録有形文化財。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

山王くらぶについて

「山王くらぶ」(さんのうくらぶ)は山形県酒田市の国登録有形文化財の旧・料亭を前身とする観光施設。館内には大正ロマンを代表する画家・竹久夢二が滞在した部屋や、日本三大つるし飾り「酒田傘福」の常設展示も。

北前船の物流拠点として栄え、また各地から文化が流れ込んできた酒田市にはレトロな建築が多く残りますが、中心部(旧市街)~高台部にかけては料亭/キャバレー/社交クラブと言った華やかな花街の面影を残す建築も現存しているのも一つの街の特長。
『日本最北端のキャバレー』と言われながら2022年に惜しまれつつ閉店した「白ばら」の向かい、2階部分の扇子のあしらいと朱色の外観が特徴の重厚な和風建築の山王くらぶもその一つで、先に紹介した『相馬樓』の程近くに位置します。

明治時代中期、1895年(明治28年)に当初は「環翠楼」の名で創業、昭和時代に「宇八楼」「山王クラブ」のと名前を変え酒田を代表する料亭の一つとして市民に親しまれました。特に二階、現在は“日本三大つるし飾り”の一つ・酒田傘福の展示会場の百畳の大広間は当時の山形県内では初という広さだったとか。

戦前・戦後の需要減退などで営業形態や所有者は変遷。1999年に料亭としての営業を終了したのち酒田市の所有となり、2008年に料亭文化を伝えるための観光施設として開館。現在は地元のイベントやブライダルの司会業を営む企業が指定管理者として運営されています(ブライダル企業の文化財運営は他にも例がありますが「司会業」の企業さんというのは珍しい)。

1階には部屋ごとに異なる意匠が見事な和室が数室、棟梁は『相馬樓』や日和山六角灯台(山形県指定文化財)も手掛けた酒田の名工・佐藤泰太郎(佐藤泰太良?)。それぞれ「北前船の間」「酒田商人の間」「文人墨客の間」「寺社めぐりの間」「料亭文化の間」と名付けられ、北前船で栄えた酒田の歴史に関する展示が見られます。
また文人墨客の中でも特に山王くらぶと縁が深かったのは近代に活躍した画家/詩人・竹久夢二。3度こちらを訪れた氏が寝泊まりした茶室も「夢二の間」として公開されています。

そんな1階座敷の各部屋から眺められるいくつかの庭園の姿が。冒頭の写真は「夢二の間」と喫茶「宵待亭」から眺められる中庭(池泉庭園/現在は枯池)。この中庭を見て気づくのは、表は格子戸に重厚な唐破風屋根の玄関と“御殿”のようだけど、中庭は港町らしい?三角屋根という遊び心あるデザイン。
そして「寺社めぐりの間」~「文人墨客の間」にも元は池泉庭園だった?枯池の庭園が見られます。

ちなみに“日本三大吊るし飾り”は「酒田傘福」「伊豆稲取つるし飾り」「福岡柳川さげもん」の3つ。さげもんは国指定文化財庭園『御花』で雛祭りの時期に見られます。山王くらぶでは傘福の製作体験も!

(2023年9月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR羽越本線 酒田駅より徒歩20分強
酒田駅より路線バス「中町②」バス停下車 徒歩7分

〒998-0037 山形県酒田市日吉町2丁目2-25 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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