出羽遊心館

Dewa Yushinkan Garden, Sakata, Yamagata

このスゴさ知って欲しい…!“京都迎賓館”並のスケールの現代数寄屋建築と、鳥海山/月山をのぞむ日本庭園と露地庭。京都の茶室の巨匠・中村昌生設計。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

出羽遊心館について

「出羽遊心館」(でわゆうしんかん)は山形県酒田市の生涯学習施設であり、全面的に和風の意匠でデザインされた大型な現代数寄屋風建築。その設計は京都の茶室研究/数寄屋建築の巨匠・中村昌生(京都伝統建築技術協会理事長)。その週には“庭屋一如”な回遊式の日本庭園や露地庭園があります。

「山形県酒田市の生涯学習施設」…という額面通りではそのスケールが伝わらない、内閣府の『京都迎賓館』と双璧をなすレベル!!!の驚きで大型な現代和風建築がこの出羽遊心館。庭園を含めた総面積は約1500平方メートル。

JR酒田駅より約4km、『酒田市美術館』『土門拳記念館』『酒田市国体記念体育館』など酒田市の公共建築が立ち並ぶ一帯の、クロマツ林に囲まれていた最上川南岸の高台に1994年(平成6年)に開館した出羽遊心館。
なお酒田市は北前船の代表的な寄港地として江戸時代から栄え、お茶などの上方文化が根強く伝わっていたのがこの大寄せ茶会向けの施設の建立に繋がっていたそう。

もう玄関から“贅を尽くした現代和風建築”な網代天井ですごい。立礼席としても利用されているホール(「ホール」と言えども正面には床の間、天井は網代網の大型数寄屋建築)、計76畳の「研修室」の棟、水屋のある14畳の広間+8畳〜11畳の和室が3室連なる棟、そして小間『泉流庵』…とデザインが異なる和風建築が4棟。それぞれに山形の金山杉や京都の北山杉などの天然の樹木がふんだんに用いられています。(室内利用がない日は各部屋を自由に見学することが可能)
茶室『泉流庵』の名は、奥州藤原家ゆかりの尼僧・徳尼公が藤原秀衡の遺臣36騎に守られ、酒田に落ち延びた後に結んだ庵の名前が由来。

設計は前述通り、茶室研究や数寄屋建築の大家・中村昌生さん。“庭屋一如”ということばの提唱者であり、山形県内では山形市の『もみじ公園』の清風荘や『山寺芭蕉記念館』等も手掛けられています。この出羽遊心館では公共建築百選、照明普及賞(ホールの照明が和紙に包まれ和モダンで素敵)、やまがた景観デザイン賞を受賞。

そんな和風建築を囲う形で約9000本/450種の樹木のある日本庭園があります。建物の入り口側から見て右手側(南側)には芝生を基調とした庭が広がり、左手側(北側)のホールや研修室の正面には枯流れを基調とした回遊式庭園があり、その枯流れがず〜〜っと続き「泉流庵」への露地へと至るようになっています。(奥の泉流庵が源流/米沢方面)
この枯流は最上川を表し、訪れた日は曇り空ですが、天気が良い日は鳥海山・月山が借景にのぞめるとか…。

規模で言えば日本で五本、三本の指に入るのではと思う現代数寄屋建築…ながら、訪れた土曜日は1時間程の滞在時間に他に誰も訪れず…。観光での来場より市民利用が主体の施設とはいえ、そのスゴさにもっと知って欲しい現代の名和風建築…!

(2023年9月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR羽越本線 酒田駅より約4km強(市内各所にレンタサイクルあり)
酒田駅より路線バス「出羽遊心館・美術館」バス停下車 徒歩2分

〒998-0055 山形県酒田市飯森山3丁目17-86 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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