伝統的な京扇子の製造卸を営む京町家空間の、枯流れの独創的な庭園。月釜やイベントも行われる開かれた京町家。
大西常商店について
「大西常商店」(おおにしつねしょうてん)は京都の中心街・四条烏丸からも程近く、松原通高倉西入ルにある京扇子製造卸とその店舗。築150年ほどの京町家と中庭が残ります。
2019年に出版された『京の家 町家』という本を読んでいて一目惚れした庭園!今年は京町家の庭園に興味を持って、これまで紹介した庭園もそれぞれに個性があって好きなのですが、この狭い空間内で、山から沢が流れてくるような表現は初めて。(※現在は水は止めていますが、昔は流れていたんだそう)
庭園のみの見学は(たぶん)できませんが、好きな鳥獣戯画の京扇子を買いつつお願いして見学させていただきました!
非公開ってわけでもなく、その京町家の広間や茶室はレンタルスペースとして利用することもでき、従来は茶室“常扇庵”で月釜(茶会)やイベント等も開催されているそう。また扇屋ならではの“投扇興”というカルチャーの体験も。
700種類以上の扇子と取り扱う大西常商店。初代・大西常次郎が創業したのは昭和初期、そしてこの地に移転したのが1939年(昭和14年)。ということは京町家自体はそれ以前からあったってことなのかもだけど、この庭園が作庭されたのは昭和以降とのこと。
一目惚れしたのはたぶん「あまり見たことないタイプの京町家の庭だ!」という全体的なところなんだけど、庭石のカラフルな感じとかすごく良いし不思議とすごく傾斜を感じる。あと待合も良くって!
奥の石灯籠の笠が少し壊れているのは、阪神大震災の際に倒れ欠けてしまったそうなのですが。それでも立て直し、現在では三方をビルやマンションに囲まれながらも古き良き京町家を少しずつ修復しながら、店舗のみならず上記のようにイベント等も行い場として活かし続けられています。
文化財という制度は必要なものだと思うけれど、色んな人たちの色んな京町家を見ていると…“文化を残す”と行為は、行政や“誰か”のものではなく(所有者だけでなく集う人も含めて)“自分ごと”なんだよなー、トップダウンじゃなくボトムアップな感じ。それってすごくいいな。と思う。(勿論、ボトムアップだけだと失われるものも出てくるので時にトップダウンも必要なのだけど)
見させていただいたのは2020年祇園祭の宵山の期間。「例年はこの3日間が最も人が訪れるんですが――」という言葉に少し切なくなってしまったけれど、9月にちょうどまいまい京都さんのツアーがあるみたい。この町家はぜひ観て、体験してほしいと思える場所です。月釜も再開したら行こうっと!
(2020年7月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
京都市営地下鉄烏丸線 四条駅・五条駅より徒歩6分
阪急京都線 烏丸駅より徒歩8分
最寄りバス停は「五条高倉」「烏丸松原」バス停 徒歩5分
〒600-8086 京都府京都市下京区松原通高倉西入る本燈籠町23 MAP