長江家住宅

Nagae Family House Garden, Kyoto

2019年にはグッドデザイン賞受賞。江戸時代からの歴史をもつ呉服商の、京都市指定有形文化財の京町家の庭。

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長江家住宅について

【通常非公開・撮影禁止】
「長江家住宅」(ながえけじゅうたく)は京都・四条烏丸からも程近くにある京都市指定有形文化財の。普段は非公開ですが、例年7月中旬、祇園祭の宵山の期間に山鉾町周辺の老舗が屏風や嗜好品を展示する“屏風祭”で特別公開されます。
2020年はCOVID-19の影響で公開は中止。それに代わり、保全・活用において連携・協力している立命館大学アート・リサーチセンターの『祇園祭デジタル・ミュージアム2020-祇園祭の過去・現在・未来-』にて様々な記録が公開されています。360度画像も!

前述の通り2020年は公開されませんでしたが――今回取材という形で見学させていただきました。7月だったので床の間にはちまきの姿も。近年は公開時も撮影禁止となっている、貴重な文化財京町家の写真をご紹介。

その歴史は江戸時代後期の1822年、代々“大坂屋”という屋号で呉服卸商を営んできた長江家三代目・大坂屋伊助が当地に初めて屋敷をかまえました。しかし幕末・1864年に禁門の変の大火により焼失。
その後1868年に現在残る最も古い建物である主屋北棟が再建。今回見学させていただいた主屋南棟・離れ座敷などは明治末期~大正時代の築100年以上の建築。

そして!自分の見学のメインは庭園です。奥座敷・化粧部屋・離れ座敷の三方からも眺められるように意図された庭園なのだそうで、植栽は一年を変わらず楽しめるように常緑樹が中心。1995年の阪神大震災で倒れるまでは伽藍石のあたりにもう一つ石灯籠があったとのこと。
大正4年に増築された離れ座敷からの飛び石のルートも考えると、現在の庭園の姿はその頃に形作られたものでしょうか。周囲にはマンションも建つ京都市の中心部にあって、建物内からはそのような景観がカットされて庭園が眺められる。その姿まさに“市中の山居”。

数年前までは現役の住居・店舗として利用されていましたが、2015年に長江家8代目のご当主より、株式会社フージャースコーポレーションへと継承。また同時に立命館大学との産学連携もはじまり、企業の迎賓館として利用や前述のようなデジタルアーカイブなど保存・活用が進められています。

特筆すべき点はその連携によって2019年にグッドデザイン賞を受賞していること。
この1、2年でも「室町時代の京町家が解体されてしまった」(川井家住宅)「保存を条件に売却したのに解体計画が出てきた」(旧川崎家住宅)などなど“歴史的建造物”を取り巻く環境は決して順風満帆ではない。京都は多分その問題意識が高いほう。そんなご時世で町家の元の所有者と東証一部上場企業、地元大学の産学官民連携で活用を探る取組は、とても理想的。自分自身としても、残されている間に数多くの“京町家の庭”のデータを残せたら…!

今年の特別公開は実施されませんでしたが、2021年へ向けて特別公開を企画中とのこと。Facebookに加えて、TwitterInstagramもはじまり、公開が決まった際には告知されるとのことなので今のうちに公式SNSをチェック!

(2020年7月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

京都市営地下鉄烏丸線 四条駅より徒歩5分
阪急京都線 烏丸駅より徒歩6分
バス利用の場合も「四条烏丸」バス停が便利

〒600-8443 京都府京都市下京区綾小路下ル船鉾町394 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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