神宮寺庭園

Jinguji Temple Garden, Minami-Awaji, Hyogo

“国生み神話の島”淡路島の離島・沼島の梶原景時の菩提寺に残る独創的な石組の枯山水庭園。兵庫県指定名勝。

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神宮寺庭園について

【要事前連絡】
「龍燈山 神宮寺」(じんぐうじ)は淡路島の南に浮かぶ離島・沼島にある平安時代の880年(元慶4年)開基の真言宗寺院。鎌倉幕府の初代将軍・源頼朝の重臣として有名な梶原景時を含む梶原氏の菩提寺で、梶原氏に寄進されたと伝わる宝物のうち“尊勝法華曼荼羅”“紺紙金銀字入大乗論”が兵庫県指定文化財、そして本堂裏にある枯山水庭園が兵庫県指定名勝となっています。

これまでも何度もその名を挙げている兵庫県の庭園巡りのバイブル的存在、西桂『ひょうごの庭園~図絵で読み解く~』。こちらもその本で知りました。なんなら淡路島の南に離島があるということもこの庭園をきっかけに知った。

その後、幾つかの本で目にする機会があったけれど、総じて言うと“日本の最高の石庭の一つ”と言っても過言ではない評価の高さ。あぁあ見たい。2020年秋、徳島へ行く用事の途中に同じ兵庫県指定名勝の『護國寺庭園』と共に立ち寄りました。
沼島への入口・土生港までは洲本方面や南あわじ方面(陸の港西淡)からバスがあります。確実な情報は沼島観光のサイトをご確認ください。(でも今回自分は福良からレンタルスクーターで行きました)

淡路島から高速船で10分。古代、国生みの神(イザナミ・イザナギ)が一番最初に作りだしたのは淡路島と言われますが、中でもこの沼島が一番最初だという伝説が島には残るそう(“オノコロ”という地名も)。船から見える島そのものや周囲の奇石の姿を見ていると確かに神々しさがあふれ出てる。

神宮寺に隣接し、沼島港を見下ろす高台にあるのが室町時代の1436年に梶原景俊により創建された沼島八幡宮。境内背後の森はこの八幡神社が建立される以前から神の森として伝わり、世界的な植物博士・牧野富太郎も興味を持ち出入りされたそう。神宮寺はかつてはこの八幡神社の宮寺という関係性でした。

八幡宮と同じく高台に位置した神宮寺が現在地に移ったのは江戸時代の前期。本堂裏にある兵庫県指定名勝の庭園(*拝観は要事前連絡)もその際に作庭されたものと推測されています。沼島八幡宮へと至る急斜面に、幾重にも岩を突き刺したデザインが唯一無二の築山式枯山水庭園。かっこいいの一言。
なんと言っても石。沼島の石――阿波の青石と同じ緑色片岩だけど、厚みのない石が多用される独創性がこの庭園にはある。

西桂さんの解説では国指定名勝『阿波国分寺庭園』や徳島市指定名勝の『観音院庭園』と類似性が挙げられているけど、(現在は土と苔で青くなってるから岩肌が見えづらいけど)岩壁を築山としている姿は『童学寺庭園』に近い印象も受ける。正面から見てもいいし、建物(書院)越しに見てもいい。

なお、庭園の一角に見られる五輪塔。これは“梶原五輪石”と呼ばれ、梶原景時のお墓だと伝えられているそう。梶原景時=鎌倉・相模・坂東…ってイメージが強いですが、鎌倉時代の歴史書『吾妻鏡』には梶原景時が淡路島で行動をしていた遍歴が記されているんだそう。その他、神宮寺には司馬遼太郎が沼島について記した文の石碑も残ります。

…なお沼島にはもう一つ代表的な古庭園があるのですが、岩盤崩落により現在は入場禁止。当面再開の見込みは無く、観光情報等からは削除を進められているそう。残念ですが安全第一で…。それにしても、現代においては極めてアクセスの悪いこの場所に素晴らしい庭園が2つもあったというのは興味深い。船での移動が強かった近代前までは今ほど“僻地”ではなかったのか…。

(2020年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

沼島港より徒歩5分
沼島へ渡る土生港へのアクセスは沼島の公式サイトを参照。→こちら

〒656-0961 兵庫県南あわじ市沼島2523 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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