JR只見線の駅から徒歩3分。かつて会津国大名・蘆名氏に仕えた武士→豪農の屋敷と、魚沼地域の貴重な歴史的庭園。国指定重要文化財。
目黒邸(旧目黒家住宅)庭園について
「目黒邸」(めぐろてい)はJR只見線・越後須原駅から徒歩3分とすぐの場所にある豪農屋敷。「旧目黒家住宅」として主屋・新座敷(橡亭)・中蔵・新蔵の4棟と屋敷地が国指定重要文化財で、江戸時代中〜後期に建築された主屋と近代に建築された橡亭とそれぞれから眺める池泉式の日本庭園も残ります。
2年半ぶりに新潟を訪れた2021年秋に初めて訪れました!この目黒邸もこの旅行で行きたい上位にあった場所――なんだけど、小島谷の『住雲園』と同じく頭を悩ませたのがアクセス。
駅から徒歩3分と書いたものの、肝心の只見線が1日4往復…。開館時間中は13時台の1本のみ。小出〜越後須原間の路線バスを組合せることで当地に取り残されることは避けられる(*平日のみ)けど、気軽に途中下車出来る場所ではないのは確か…。只見線、小出→会津若松と乗ったことはあったけど沿線の駅近にこんな場所があったとは〜。また目黒邸のある一帯が新潟県立の『奥只見レクリェーション都市公園 須原公園』として整備されているので、人はそこそこ居る。
元は会津国の戦国大名・蘆名氏に仕える武士だった目黒家。蘆名氏が伊達政宗に敗れたのを機に目黒家も会津を離れ、1590年(天正18年)より旧会津街道沿いのこの越後・魚沼の地で帰農したと伝わります。江戸時代に入ると慶長年間には15ヶ村の“肝煎役”をつとめ、以後江戸時代中期には糸魚川藩魚沼領の“割元庄屋”〜明治時代に入るまで大庄屋職をつとめました。
近代に入って以降も須原村の中心人物として15代目当主・目黒徳松が新潟県議会議員〜衆議院議員を歴任、16代目・目黒孝平も衆議員議員となり、只見線の開通や銀行の設立、水力発電所の建設など地域の近代化を推進・尽力されました。
受付を済ませて目の前に現れる巨大な茅葺屋根のお屋敷の外観は“豪農らしい”佇まいなのだけれど(いやそれでもこんな重厚な茅葺の玄関も稀有。この屋根が豪雪に耐えた…)、近代まで中央政界でも活躍された家柄とあって、各所に近代っぽいものもある。
まずその一つが新座敷として重要文化財の「橡亭」(ちょてい)。1901年(明治34年)の数寄屋風の意匠がかっこいい近代和風建築。座敷から眺める池泉庭園との距離が近く、池の中に浮かぶ茶室みたい。
そして主屋の目の前に広がる主庭園――の東部分にある洋風の石柱による門。この庭園自体は屋敷と同じく江戸時代後期の作庭で、展示されている古写真との比較では“大正時代の頃と殆ど変わっていない”とのことだけど。庭園の奥へ行くにつれて拡張されていった庭園なのかな…だから洋風の石柱や城郭のような野面積の石垣とか色んな造形が現れるんじゃないかと。
これまで色々と新潟の豪農・大地主の庭園を紹介してきたけれど、魚沼地域はこれが初めてで江戸時代の庭園というのも実は珍しい(近代〜昭和が多い)、とても貴重な庭園。屋敷地も国重文だから実質庭園も文化財の一部か。
心字池を中心に、斜面を活かした滝と斜面の上に鎮座する稲荷社…先に名を挙げた『住雲園』とはちょっと雰囲気似てる(言うほど近くないけど)。他の魚沼地域の庭園も今後調べて足を運びたいな…。
なおこの都市公園『須原公園』の中には民俗文化財館や目黒邸に伝わる古文書・史料が展示されている『目黒邸資料館』も。公園自体は超広いので時間はいくらでも潰せます。只見線の旅にも。
(2021年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR只見線 越後須原駅より徒歩3分
JR小出駅より路線バス「須原駅角」バス停下車 徒歩3分
*いずれも本数少ないので、組合せて
〒946-0216 新潟県魚沼市須原892-3 MAP