柏から世界へ…江戸時代に幕府の御用牧の“牧士”とつとめた豪農/豪商が造営した国指定重要文化財が8棟のお屋敷と国登録名勝の文化財庭園。
旧吉田氏庭園(旧吉田家住宅歴史公園)について
「旧吉田家住宅歴史公園」(きゅうよしだけじゅうたくれきしこうえん)は千葉県柏市の唯一の国指定重要文化財の建造物「旧吉田家住宅」を中心とした公園・庭園。江戸時代末期に建築されたお屋敷は庭園も「旧吉田氏庭園」として国登録記念物(名勝地関係)となっています。
2024年、久々に訪れたのでその際の写真を中心に更新。
Jリーグ・柏レイソルのホームタウンとして知られる千葉県柏市。その北部、現代にはTX(つくばエクスプレス)の通る「田中地区」は江戸時代には幕府の天領と旗本の知行地で構成される農村だったそう。
吉田家は家伝では平安時代まで歴史をさかのぼり現在のご当主は43代目という旧家で、江戸時代には当地の名主をつとめる豪農かつ、千葉県北西部で盛んだった醤油醸造にも進出する豪商であり、幕府の軍用馬を放牧する御用牧「小金牧」を管理する「牧士」(牧師ではない)として武士と同等の士分格でもありました。
そんな吉田家が江戸時代末期に造営したのが現在まで残る「旧吉田家住宅」。最も古い長屋門が1831年(天保年間)、メインとなる茅葺屋根の主屋・書院が1854年(嘉永7年)、新座敷が1865年(慶応年間)に建てられたもので、その他に西門/新蔵/道具蔵/向蔵の計8棟が国の重要文化財となっています。
ちなみに長屋門前の芝生広場からは他にもレトロな洋風な建築の姿も生垣の向こうに見えますが、公開されているのは重文のお屋敷のみ(公開エリアは柏市の管理)。そんな風に立ち並ぶ邸宅が吉田家の繁栄ぶりを感じさせます…。
かつて江戸時代にも要人・賓客を迎え入れていた主屋の式台玄関〜書院。花菱組子の欄間や狩野派の絵師(10代目)による襖絵が見どころの書院をL字型に囲み広がる苔むした庭園が、国登録記念物の庭園のうちの一部。1861年(文久元年)作庭。
建物面積だけでも330坪(1,178平方メートル)ある吉田家ですが、実はいわゆる「茶室」は残されていない。吉田家に残る絵図では、数寄屋風の意匠が施されたこの書院でお茶を楽しまれていて、客人は露地風の庭を通ってこの書院へと招かれていたとか。マツの木の生けた庭門も◎!
新座敷の前にもまた趣の異なる庭園が広がります。苔むした姿と座敷から伸びる飛び石の雰囲気は似ていながら、こちらは枯池のもうけられた枯山水庭園。その奥に広がる竹林の景が書院庭園とは異なる“自然さ”を醸しています。
文化財としての種別は異なるのですが、野田市の国指定文化財『高梨氏庭園』(こちらは建物は未指定)と所々似た雰囲気があって、2箇所とも見ることによって似た所&違う所が楽しめる。
また主屋〜向蔵の間の前庭も「庭井戸」を中心に季節の草花が植わっていて四季の彩りを楽しむことができます。そんな向蔵と並ぶ「西蔵」では各種シャーベットなどをいただきながら一休みすることも。柏から世界へ…な国の文化財庭園、ぜひ訪れてみて。
(2016年3月、2024年9月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR常磐線 柏駅・北柏駅より路線バス「花野井入口」「花野井神社」バス停下車 徒歩6分
つくばエクスプレス 柏たなか駅より路線バス「花野井神社」バス停下車 徒歩6分
JR柏駅より4.5km(駅前にレンタサイクルあり)
〒277-0812 千葉県柏市花野井974-1 MAP