旧川喜多邸別邸(旧和辻邸)庭園

Former Kawakita & Watsuji Residence(Kawakita Film Museum) Garden, Kamakura, Kanagawa

春・秋に特別公開。哲学者・和辻哲郎、“日本映画の母”川喜多かしこ/川喜多長政夫妻が暮らし、かつて海外映画スターも迎えられた鎌倉市景観重要建造物。

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鎌倉市川喜多映画記念館 / 旧川喜多邸別邸(旧和辻邸)庭園について

【通常非公開/春・秋に特別公開】
「旧川喜多邸別邸(旧和辻邸)」(きゅうかわきたていべってい・きゅうわつじてい)は「日本映画の母」と呼ばれた川喜多かしこ、現「東宝東和」創業者・川喜多長政夫妻の旧別邸&『古寺巡礼』が有名な哲学者・和辻哲郎の旧自邸。鎌倉市景観重要建造物に指定、日本遺産「いざ、鎌倉」の構成文化財。現在は同敷地に『鎌倉市川喜多映画記念館』が開設されています(記念館は通年公開)。

昭和時代初期に映画配給会社を設立、戦前~戦後に掛けて日本の映画シーンの発展に大きく貢献し「川喜多賞」としても名を残す、川喜多長政・かしこ夫妻。
鎌倉を代表する観光スポット『鶴岡八幡宮』の程近くに別邸を構え、2010年ににその土地の一角に開館した『鎌倉市川喜多映画記念館』では各種映画資料の展示・閲覧ができます。

そんな記念館の上部にある平屋建ての和風建築、こちらが「旧川喜多邸別邸(旧和辻邸)」。こちらは通常非公開で、春(桜の季節&GW)と秋に数日間の特別公開があります。

この邸宅、元々は哲学者・和辻哲郎の自邸で、江戸時代後期の民家を神奈川・秦野/大山の麓から東京・練馬に移築して使用されていたもので、和辻の死後に川喜多が入手し1961年(昭和36年)に現在地へと再度移築されました。旧川喜多邸・旧和辻邸と併記されるのはその為。
東京への移築の際に関わった大工棟梁が山田源市。近代に横浜/鎌倉/東京を中心に実業家・文化人の住宅を多く手掛けた人物で、『三渓園』を含む原富太郎、島崎藤村、小林勇(岩波書店会長)等の邸宅にも携わりました。尚、旧和辻邸の移築・保存を川喜多に持ちかけたのは小林勇だったとか。

土間の梁や居間の囲炉裏が農家としての面影を残す一方で、インテリアや天井は洋風が取り入れられた“近代和風建築”としての風情も。書斎には和辻が使っていた作りつけの書棚も残されています。昭和の終わりにはこの縁側でヴィム・ヴェンダース監督のドキュメンタリー映画『東京画』の撮影も。

邸宅の前に広がる庭園はシンプルな芝庭ですが往時の姿を残していて、この邸宅・庭園で海外から訪れた映画監督・映画スターを迎えるパーティーも催されていたとか。アラン・ドロン、フランソワ・トリュフォー監督、サタジット・レイ監督など…。

…シンプルな芝庭、と書いたけれど、建物の奥には鎌倉らしい岸壁の山肌が見えたり、おもむろに石仏が点在していたりと、“近代の文化人趣味”が反映されたお庭でもある。春・秋に特別公開のある通り、春には建物の周りに植わった桜が、GW頃には斜面に植わったツツジが花を咲かせます。特別公開の際はぜひ訪れてみて。

(2018年4月、2024年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR横須賀線 鎌倉駅より徒歩10分

〒248-0005 神奈川県鎌倉市雪ノ下2丁目2 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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