蟹仙洞庭園

Kaisendo Garden, Kaminoyama, Yamagata

かみのやま温泉駅から徒歩5分、国重要文化財から現代アートまで楽しめる駅近の穴場ミュージアム。国登録有形文化財の近代和風邸宅から眺める庭園も!

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

蟹仙洞(旧長谷川家住宅)庭園について

「蟹仙洞」(かいせんどう)は“奥羽三楽郷”上山温泉の玄関口・JRかみのやま温泉駅のほど近くにある美術館。国指定重要文化財の工芸品を所蔵するほか、大正時代に建築された近代和風邸宅を活用したハウス・ミュージアムでもあります。「蟹仙洞旧長谷川家住宅主屋」として主屋/土蔵3つ/展示館の5棟が国登録有形文化財。

2023年、約4年ぶりに“日本のクアオルト”山形のかみのやま温泉へ。前回は温泉街寄りの施設を紹介しましたが、こちらは駅から温泉街とは逆方面に徒歩5分と駅近にある施設。道路沿いの白くて立派な土蔵が目印。

山形の置賜地方で製糸業を営み成功した実業家・長谷川兼三が大正時代に造営した邸宅と製糸工場をそのまま活用したミュージアム。本社は高畠町にあったものの、上山に新築した工場はこの地域では最大規模の人員が働く工場だったそうで1971年(昭和46年)まで操業していました。
「蟹仙洞」というこのお屋敷(=現在はミュージアム)の名は長谷川兼三自身の命名で「横に這う/横ばいの人生」という人生観が表されています。またその扁額・題字は会津八一による筆。

そんな長谷川兼三が収集した約4,000点にも及ぶ美術品/工芸品/民芸品を公開するため、かつて製糸工場の一部だった蔵を展示室に改装し1951年(昭和26年)に美術館として開館。

そのコレクションも多種多様。国指定重要文化財となっているのは中国・明の時代の漆工芸品や徳川慶喜が遺愛した「堆朱印箪笥」。かつては同じく国重要文化財だった日本刀3本を含む刀剣が展示メインの一つでしたが、近年は《地元にこだわる展示》をテーマとして、山形・東北で活動する若手現代アーティストの作品が数多く展示されています。ちなみに地元ではないけれど洋画家:ロバート・ハインデル作品も多く、ミュージシャン・葉加瀬太郎さんによるアート作品も…!

邸宅について。主屋は大正14年(1925年)に銘木をふんだんに使用され建てられた近代和風建築。
その前に広がる庭園も当時に作庭が始まったもので、東方の山が借景としてそびえます。今回訪れた際は記録的な猛暑も影響して池泉に水がない状態でしたが、かつて作家・井伏鱒二が蟹仙洞を訪れた際にこの池に生息した60年にもなる鯉を題材に『還暦の鯉』という短編を書いたという謂れも残ります。

また唯一戦後の1953年(昭和28年)建築された「展示館」も国登録有形文化財。名前こそ展示館ですが、昭和中期のモダニズム時代の和洋折衷の趣がとても良い“離れ”的な建物。附属されている茶室にも、その空間に合う現代の作家による現代アートが展示されていてとても良い…!

館長は現在の地方の個人/私設ミュージアム・文化財のアートシーンに於ける状況について、熱い想いを色々と語ってくださった。旧家・庭園・美術品…それぞれ分けて見るのではなく「組み合わせの妙」も含めてとても面白い、応援したいミュージアム。また訪れたい!

(2023年8月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR山形新幹線 かみのやま温泉駅より徒歩5分

〒999-3134 山形県上山市矢来4丁目6-8 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
PICK UP - TOUR / EVENT
MEDIA / COLUMN
最新の庭園情報は約10万人がフォローする
【おにわさん】のSNSから。