
古田織部ゆかりの城郭の一部を活かし、住友化学の役員宅として造られた近代和風住宅と庭園。国登録有形文化財。
旧羽室家住宅・原田城跡について
「旧羽室家住宅」(きゅうはむろけじゅうたく)は昭和初期に建てられた住友化学工業の役員・羽室廣一氏の邸宅で、この近代和風建築は国登録有形文化財。また庭園の一部が中世の城郭「原田城跡」(はらだじょうあと)の土塁などを活かして作庭されたものになっており、豊中市指定史跡でもあります。
2019年12月、初めて阪急宝塚線沿線の町や庭園を巡りました。お目当ては明治時代に開発された郊外住宅地“岡町住宅地”にある国指定名勝の『西山氏庭園』だったのですが、そこでこの羽室家の案内をもらい。最寄り駅は異なるけど徒歩圏内だったので足を運びました。“日本庭園”としては弱いかもしれないけど…真っ赤に染まった紅葉の木が多かったのがとてもきれいだったし、そして和洋折衷の近代和風住宅好きなら絶対好き!
まず原田城跡について。こちらも『池田城跡』と同じく北摂の豪族の居館だった中世の城郭。池田氏と同じく原田氏も室町時代には室町幕府の管領・細川氏に仕え、そしてやっぱり細川晴元に攻められ落城。
戦国時代を迎え、池田城跡でも登場した荒木村重と織田信長が対峙する際、武将としての古田織部がこの原田城跡に陣を構えたそう。なお細かく言うと原田城には“北城”“南城”と2箇所あるのですが、それを掘り下げることが目的ではないので省略!古田織部が陣地をかまえて現在羽室家が建つのが北城。
その戦い後は廃城になり、江戸時代を過ぎて近代へ。岡町住宅地と同じくこの一帯も“松籟園住宅地”として昭和初期に開発され、羽室家が購入。
他の阪神間モダニズム建築として語られる「財閥の邸宅」ほどの豪華さではないにせよ、外観はシンプルな洋風でありながらも邸内には網代天井のような意匠や数寄屋風の和室もあったり、一方で応接室は洋風だったり。(なお主屋のほかに土蔵と納屋も登録有形文化財)
建物と比べて庭園もとても広く、建物の周辺は石灯籠、飛び石、現在は枯池になってる池泉庭園(こじんまりしてるけど面白い石組があるんだよな〜)…と和風庭園の色を出しつつ、道路に近づくと芝生の広がる洋風庭園に。
現在は豊中市が所有し、地元の方のイベント等で用いられているそうでーー入場料も無料(志を寄付)だし観光化は全くされていないけど、貴重な戦前の近代和風住宅。城郭マニア以外にも是非観に行ってほしい…!
(2019年12月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)