古川美術館分館 爲三郎記念館

Tamesaburo Memorial Museum(Furukawa Art Museum Annex) Garden, Nagoya, Aichi

名古屋の都心の隠れ家的なお屋敷/庭園…アートと共に庭と一体の“庭屋一如”な懸造の近代和風建築も楽しみながら、“数寄屋カフェ”も。国登録有形文化財。

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古川美術館分館 爲三郎記念館(旧古川爲三郎邸)庭園 / 数寄屋deCafeについて

「古川美術館」(ふるかわびじゅつかん)は名古屋/東海地方で幅広い事業を展開した“ヘラルドグループ”創業者・古川爲三郎の収集した美術品を公開するため平成時代に開館した私設美術館。その分館『爲三郎記念館』(ためさぶろうきねんかん)は昭和時代初期に造営された氏の自邸。数寄屋建築『爲春亭』を中心とした近代和風建築は国登録有形文化財/名古屋市景観指定文化財となっており、建築の周囲には造園家・井上卓之の監修による“庭屋一如”を味わえる庭園空間が備わります。近年は『数寄屋deCafe』も人気!

名古屋市営地下鉄・東山線の池下駅からすぐそば。この建物から少し離れれば大通りの風景ですが、名古屋の都心において貴重な緑と和風建築の庭園が残るのがこの爲三郎記念館。

実業家・古川爲三郎について。養父が破産させた貴金属の商店を弱冠20歳の時に再興させたことを皮切りに、近代~昭和の戦後まで数々の事業に取り組み一代で財を成しました。鉱山/飲食/ゴルフ場などのレジャー施設、ケーブルテレビ…中でも映画興業では映画館の運営から映画配給まで幅広く関わり、近年まで続いた「日本ヘラルド映画/角川ヘラルド・ピクチャーズ」はエンタメ好きにも知られた名前。

そんな古川爲三郎のコレクションした美術品を広く公開するため、1991年(平成3年)に古川美術館が開館。近代日本画/洋画を中心に収蔵し、現在は公益財団法人古川知足会により運営されています。

美術館本館から徒歩1~2分ほど離れた場所にあるのが別館・爲三郎記念館。元は昭和の初期、1934年(昭和9年)に上棟された古川爲三郎の自邸で、氏が亡くなられた後に「来場者の憩いの場に」という遺志の下で開館。
現在ではアート作品の展示/ミュージアムショップのほか、近年は日本庭園を眺めながらお茶できるミュージアムカフェ『数寄屋deCafe』が大人気。入館料の700円がそのままカフェでの飲食代にも使える…このお得感!使われているお茶碗も瀬戸焼、美濃焼の作家さんの作品。

2018年に正門/東門/爲春亭/茶室「知足庵」/待合/雪隠の6棟が国登録有形文化財となったお屋敷。中でも主屋・爲春亭(いしゅんてい)は一見平屋のようで、庭園から見ると懸造になっていて、その傾斜を活かした茶庭、そして地下の茶室…とまさに庭と建物が一体の“庭屋一如”な建築!
内装は開館時に建築家・吉柳満さんによって一部がリノベーション、中でも「桜の間」は現代風&洋画家・田村能里子さんの壁画が楽しめる空間。一方で「ひさごの間」では伝統的な和の意匠が楽しめます。

爲春亭の周囲に広がる庭園も開館時に昭和の著名な造園家・井上卓之さんの監修によって一部改修。施主が好んだシイノキが茂る空間は都会から隔絶され、野趣に富んだ空間で――懸造の建築に沿って流れ落ちる小川は木曽川がモチーフで、座敷と同じ視点にある白砂の広場は野点のための空間。
そしてその庭園の斜面をくださった先に、地下の茶室「太郎庵」や中庭(茶庭)へと繋がる…というなかなか珍しい構成の庭園という点も楽しい。

そして庭園の一角に独立して残る茶室が「知足庵」。“足るを知る”から名付けられたこの茶室は尾張ゆかりの織田有楽斎(織田信長の弟)が残した国宝茶室『如庵』にインスパイアされデザインされたそう。良材が用いられた茶室であり、庭園の中でのアイキャッチにもなっています。

名古屋は『八勝館』が名和風建築として有名ですが、『昭和美術館・南山寿荘』、そしてこの為三郎記念館も全国有数の名和風建築(建物+庭園の雰囲気で言うと『東山荘』が似ているかも)。名古屋を訪れる際はマストで立ち寄りたい場所。

(2019年3月、2022年10月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

名古屋市営地下鉄東山線 池下駅より徒歩5分

〒464-0067 愛知県名古屋市千種区池下2丁目50 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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