法然院庭園

Honenin Temple Garden, Kyoto

浄土宗開祖・法然の名を冠する寺院は季節ごとの“白砂壇”や現代的なガラス枯山水“つながる”が見どころ!春と秋に特別公開の方丈庭園や現代庭園“空の川”も。

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法然院庭園について

【方丈庭園は期間限定公開】
「法然院」(ほうねんいん)はその名の通り浄土宗の開祖・法然上人ゆかりの寺院。江戸時代に作庭された“方丈庭園”は春(4月1~7日)、秋(11月1~7日)のみ特別公開ですが、茅葺きの山門や白砂による“白砂壇”(びゃくさだん)を含む境内は年中拝観することができます。

世界遺産『銀閣寺』の程近く、哲学の道から少し坂を登った所にある法然院。何度か訪れていますが、2023年1月の雪の日の写真と、2023年に新たにお目見えするアメリカ人日本庭園作庭家・Marc Peter Keane作庭の“空の川”を紹介!

その歴史について。鎌倉時代のはじめ、法然は弟子の住蓮・安楽とともに東山・鹿ヶ谷の地に“鹿ヶ谷草庵”を開き修行に勤めました。しかしやがて後鳥羽上皇によって法然は讃岐国へ流罪に/住蓮と安楽は処刑される事件が起き、その後は鹿ヶ谷草庵も放置され荒廃。

それから300年以上経った江戸時代初期の1680年(延宝8年)、浄土宗の総本山で国宝の『知恩院』の38世住職・萬無和尚により再興。そのため正式な寺名は「萬無教寺」(ばんぶきょうじ)と言います。(なお同じく“鹿ヶ谷草庵”をルーツとする寺院が近くの『安楽寺』

現在法然院に残る建造物のうち、本堂と方丈(*期間限定公開)はその創建時期に整えられたもの。中でも方丈は元は伏見にあった後西天皇の皇女の御殿(桃山時代・1595年の建築)を移築したもので、その中に描かれていた狩野光信の襖絵は国指定重要文化財となっています。近代日本画家・堂本印象筆による襖絵も。

■法然院方丈庭園(16〜19枚目)
そんな方丈の前に広がる『法然院方丈庭園』は中島に阿弥陀三尊を象徴する三尊石がもうけられた池泉鑑賞式庭園。その池泉の水源「善気水」は再興以来湧き出ているそうなので、作庭されたのもその時代(江戸時代初期)かな。そして大書院〜茶室の前でも池泉庭園が見られます。

方丈庭園は期間限定だけれど、その境内には他にも“庭園的な”スポットが。まずは茅葺の山門の前&両側にある白砂の盛り砂“白砂壇”。水を表わす砂壇の間を通ることは《心身を清めて浄域に入ること》を表すそう。
デザインこそ違えど近隣の『銀閣寺』の“向月台”といい「地域性」を感じる創作物でもあり、実は季節ごとに描かれているものが異なるのが見どころ。9月中頃に訪れた時は中秋の名月に併せて月、11月に訪れた時はモミジの姿…そして早春に描かれていたのは椿。

■西中千人“つながる”(2019)(5〜8枚目)
そして2019年春、参道に新たな枯山水庭園が作庭されました。ガラス造形作家・西中千人さんによるガラス枯山水“つながる”
苔の築山の上に配されているのは、石ではなくリサイクルガラス!そして苔の島を正面に見るとグリ石が山の方から崩れ落ちているようなデザインもかっこいい。千葉県の作庭家「木村グリーンガーデナー」木村博明さんの協力で創設されました。ライトアップ等は開催されていませんが、テストライトアップの写真を見せていただいたらそれがまたとても美しかったので…いつか自分の目でも観たい!

■Marc Peter Keane“Empty River Garden / 空の川”(2023)(24〜32枚目)
また、2023年に新たに誕生したのがアメリカ出身の日本人作庭家・Marc P. Keane(マーク・ピーター・キーン)さんのデザインのコンテンポラリーな枯山水庭園“Empty River Garden / 空の川”。
Marcさんについては2022年に作庭された『Genji Kyoto 庭園』の中で紹介しているのであわせてお読みください。

『椿の庭(三銘椿の庭)』と呼ばれていた椿の銘木のある中庭を、その椿はそのままに地面部分が装い新たに。白砂の中に筆で描かれたような一筋の曲線は川を表していて、またその資材には“炭”が用いられ、環境問題が叫ばれる現代における《目に見えない炭素循環》が表現されています。(*なお当サイトでは許可を頂いた上で庭園側からの写真を掲載していますが、通常は庭園に降りることはできません)

この中庭は方丈庭園と同様に春と秋の特別拝観でしか見ることができませんが、3月中旬~下旬には境内で数多くの椿の花(落椿)を見ることができます。パンフレットの表紙も椿推しの“椿の寺”

境内には文豪・谷崎潤一郎の墓所も。哲学の道を歩く際はぜひ法然院にも立ち寄ってみて!

(2018年11月、2019年9月・11月、2021年3月、2023年1月・3月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

京都市営地下鉄東西線 蹴上駅より約2.5km(徒歩30分)
最寄りバス停は「南田町」バス停 下車徒歩7分

〒606-8422 京都市左京区鹿ヶ谷御所ノ段町30番地 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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