Genji Kyoto“浮舟の庭”

源氏京都

2022年春に京都・五条に新たに誕生したホテルの庭園は、海外出身の作庭家の先駆者・Marc P. Keane作庭のコンテンポラリーな枯山水庭園。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

Genji Kyotoについて

【宿泊者向け庭園】
「Genji Kyoto」(源氏京都/ゲンジ・キョウト)は2022年春、京都・五条河原町エリアに新たにオープンしたブティックホテル。庭園はMarc P. Keane(Marc Peter Keane/マーク・ピーター・キーン)作庭、建築はGeoffrey P. MOUSSAS(ジェフリー・ムーサス)設計というアメリカ出身/京都在住の2人による空間も見所。

2022年に京都に登場したラグジュアリーホテルとして幾つかのメディアでも紹介されている「Genji Kyoto」…ですが、ここではMarc P. Keaneさんの庭園をメインに紹介。この方の庭園をずっと生で見たかった!

まずは「Genji Kyoto」について。かつて“五条楽園”の名で知られた五条河原町を下ったエリアに2022年4月にオープン。
この地は紫式部『源氏物語』の光源氏のモデルとも言われる貴族/左大臣・源融が営んだ庭園『六条河原院』の跡地とも言われていて、ホテルのコンセプトや庭園はそこから着想されたものとなっています。

そして「Genji Kyoto」の庭園を手がけているMarc P. Keaneさんについて。アメリカ:コーネル大学を卒業後に訪れた日本で日本庭園の世界へ。京都で約20年間のキャリアを重ねた後に帰国しニューヨークを拠点にランドスケープアーキテクト/作庭家として活動(*なお現在は再び京都が拠点)。
造園家として日本の就労ビザを取得した日本で最初の人物であり、コーネル大学や京都の大学で教壇にも上がった「海外出身の日本庭園のプロフェッショナル」としてのパイオニア。

海外では著書も出されていて、英語版のWikipediaにはページがあったり、現地・アメリカではコンテンポラリーな日本庭園を残されている………のですが、そんな円熟期に入った氏の庭園が肝心の日本にこれまで無かった…!

ご本人のウェブサイトで紹介されているアメリカ国内の庭園がほんとーーにかっこよくて、いつかこの方の作品を見たいなーと思っていたMarc P. Keaneさんの、待望の日本国内に作庭された庭園が「Genji Kyoto」の庭園!

まずはロビーの庭園“浮舟の庭”(Ukifune Garden)。屈曲する枯流れが印象的な庭園は『源氏物語』の第51帖で宇治十帖のひとつ“浮舟の帖”を寓意的に表現した庭園。
流れの中の舟石は宇治川を漂うヒロイン“浮舟”の姿と、宇宙や地球の自然の中で生かされている/長い人生の中を流されている人間の無常さが表されたもの。

この枯山水の上に架けられた廊下は(現代的なスタイリッシュながら)平安時代のの橋を表したものでもあり、この庭園の傍の床の間にはニューヨークのメトロポリタン美術館から直接許諾を得た土佐光吉『源氏物語屏風』の浮舟の場面の掛軸も。

Marcさん自身からも名前が挙がったので、そのスタイルは重森三玲以降の流れにはあるのだけれど、重森スタイルの代名詞とも言える“巨石の立石”が無く、(この作品に限らず)言葉にしづらいのだけど古風ではなく“コンテンポラリー”な日本庭園へと針を進めてくれている感じがする。建築との相性も含めて。

そして屋上庭園“空森庭”(Sky Forest Garden)。一転して開放的なこちらの空間には源氏物語に登場する植物を中心に植栽。そしてなんと言っても眼下に鴨川を見下ろし、目の前には東山と清水寺をのぞむ絶景が見所!ゲストはこの絶景を眺めながら寛いだり食事を楽しむことができます。

そのほか各階にオブジェのように置かれた石造物も日本人自身が手にしなくなった古材を活かしたもので、スイートルーム各部屋には現代的な坪庭も。

ここでは庭園を中心に紹介したけれど、建築家:ジェフリー・P・ムーサスさんもマサチューセッツ工科大学(MIT)出身で、京都のや縁側という概念に魅せられたひとり。「Genji Kyoto」の建築は“和の要素を散りばめた”としてもとても面白いし、中庭がガラス戸を隔てない、京町家のように風の通る空間になっているのもこだわりの一つ。
コンクリートの中にも、木目を見せて木の温もりを感じさせるデザインなど…また木製の家具や照明はすべて京都の職人が手作りしたもの。

Marc P. Keaneさんにはそれ以外にも多くの話を聞かせていただいたので、いつか別途ご紹介したい。
任天堂創業地やみんな大好き「サウナの梅湯」もすぐ近く。今後生まれ変わってゆきそうな五条楽園でクリエイティブな拠点を探している方にもオススメ!

(2022年10月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR東海道新幹線・各線 京都駅より徒歩15分
京都市営地下鉄烏丸線 五条駅より徒歩10分
京阪本線 清水五条駅より徒歩5分
最寄りバス停は「河原町正面」バス停下車 徒歩3分

〒600-8113 京都府京都市下京区波止土濃町362-3 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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