芸術家・岡本太郎が生前に訪れた際、感動して長時間立ち止まったという――豪壮な石組の残る室町時代の庭園。
一乗谷朝倉氏遺跡 湯殿跡庭園について
「一乗谷朝倉氏庭園」(いちじょうだにあさくらしていえん)は国の特別名勝に選ばれている戦国大名・朝倉氏の館跡に残る庭園群。
戦国時代、越前朝倉氏の城下町として100年の歴史を築いた一乗谷。室町時代の終わりに織田信長軍によって滅ぼされ一帯が焼き払われて以降、約400年間に渡り再開発されることなく現代を迎えました。それにより室町時代に作庭された庭園の遺構(石組など)が良好に保存されていた…というか埋もれていたことから、「朝倉館跡庭園」、「湯殿跡庭園」「諏訪館跡庭園」「南陽寺跡庭園」の4箇所が国の特別名勝となっています。
朝倉義景の館に作庭された『義景館跡庭園』の紹介はこちら、室町幕府将軍・足利義昭をもてなす為に作庭されたと言う『南陽寺跡庭園』はこちら。
朝倉義景館跡から高台へ登ったところにあるのが、「湯殿跡庭園」(ゆどのあとていえん)。16世紀初頭(室町時代中期)、朝倉孝景の時代に築庭されたと推測されている一乗谷で最も古い庭園。
ちなみに「湯殿」に関しては文献が全く残っておらず、どのような規模で、どのような役割を果たしていたのかは不明だそう(だから義景館跡と違って建物跡を示すものは無く、ただの広場になってる)。だけど義景館跡と比べても規模の大きい回遊式林泉庭園の石組が残っていることから、城主クラスの重要な役割を果たす場所だったんだろう――という想像(妄想)はできる。
その池泉式庭園は豪壮な石組みが見所。朝倉氏庭園全般に言えることですが、力強い石組は雪舟の庭園をはじめとする室町時代の庭園の雰囲気が堪能できる――これが最初訪れた時はあまりよくわからなかったんだよなぁ。今となってはカッコいいの一言!上手には亀島、中央奥には三尊石組、そして下手には石橋の跡などが見られます。
2〜6枚目あたりの庭園の背後に見える樹木はモミジやカエデ類。訪れた3月は落葉していて寂…もとい非常に視界が開けていましたが、秋には美しい紅葉とこの石組が楽しめます。その時期にも観に来てみたい…!季節によっては借景の観音山もより美しく見えるのかもなあ。苔むした石も素敵。
ちなみに芸術家・岡本太郎が生前この場所を訪れた際に、この庭園に感動し長時間鑑賞していたそう。(…個人的には岡本太郎も個展や作品を観に行ったり大好きなのですが、このサイトで岡本太郎の名前を初めて書いた気がする…!)
一帯は「一乗谷朝倉氏遺跡」として国の特別史跡でもあり、吉永小百合さんが出演したSoftBankのCMロケ地になったことでも知られます。
朝倉氏庭園として名勝指定を受けているのは前述の4箇所だけですが、発掘された庭園の数は15箇所にも登るとのこと…次回は名勝指定受けていない遺構もチェックしたい…!
(2011年3月、2019年3月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR越美北線 一乗谷駅より約2km(徒歩約30分・駅前の資料館にレンタサイクルあり)
JR福井駅より路線バス「武家屋敷前(復原町並)」バス停下車
〒910-2153 福井県福井市城戸ノ内町 MAP