世界遺産・東大寺や奈良公園、国指定名勝『依水園』に隣接する“もう一つの日本庭園”は奈良屈指の苔の美しい庭。奈良県指定文化財。
吉城園について
「吉城園」(よしきえん)は奈良の代表的観光スポット『奈良公園』や世界遺産『東大寺』に隣接する日本庭園で、国指定文化財(国指定名勝)の庭園『依水園』に隣接します。園内に建つ12棟の建造物が「旧正法院家住宅(吉城園)」として奈良県指定文化財。
昭和の終わりに奈良県の所有となり平成年代序盤から公開が始まった吉城園。以前は入園は有料でしたが、2020年4月より無料公開に。(庭園が有料→無料化は珍しい事例ですが、奈良県の官民連携事業「吉城園周辺地区保存管理・活用事業」によるホテル開発がその背景にあります。ただ単純に来場者数増やすために無料になったわけではないので念のため)
万葉集にも詠まれた宣寸川(吉城川)を挟んで依水園のすぐ南隣。現在、依水園の一部と吉城園のあるこの場所は、「興福寺古絵図」によると江戸時代以前には興福寺の塔頭寺院『摩尼珠院』があったとされます。
明治時代の廃仏毀釈などの影響で民間の所有となった摩尼珠院跡地。大正時代に入り、1919年(大正8年)に現在見られる約8,900平方メートルの広大な回遊式庭園と主屋・茅葺の離れ茶室などの建築群が造営されました。主屋の内部は普段は公開されていないのですが、年代的には“近代和風建築”らしい意匠が見られるのかも…。
庭園は主に“池の庭”、“苔の庭”、“茶花の庭”の3つに分けられます。まずは東向きに広い窓を持つ主屋の前に広がる“池の庭”。その特徴は、建造物のあるグラウンドレベルからかなり深く掘り込んだ池泉で、その一角には“渓谷”のような風景が表されています。
池の向こう側の築山の先には連続して若草山・春日山の借景が視界に入る。深い池泉〜築山の高低差によって若草山・春日山が近くに感じられる仕掛けが施されています。
“池庭”から茅葺屋根の田舎屋風の離れ茶室〜露地庭園を挟んで、杉苔の広がる“苔庭”へ(露地も苔がきれい!)。残暑が続く9月に訪れた時も見事だったこの苔庭、なんでも飛火野と同系の地下水脈が園内に流れていることから、杉苔の生育に適しているとか…。前回も今回もスタッフの方がお手入れされていた姿も印象的でした。
最後に、石畳の園路を進んだ最奥にあるのが茶席のための草花を育てていた“茶花の庭”。池庭にしても苔庭にしても、本来は「お茶のための空間」だったんだろうなぁ。今後活用が進む中で、室内でお茶を楽しめるイベントがあったらぜひ参加しに訪れたい!
(2018年9月、2022年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
近鉄奈良泉 近鉄奈良駅より徒歩10分強
JR大和路線・奈良線 JR奈良駅より徒歩25分
JR奈良駅・近鉄奈良駅より路線バス「県庁東」「押上町」バス停下車 徒歩3分
〒630-8213 奈良県奈良市登大路町60-1 MAP