
2021年に初の特別拝観。この秋京都で見るべき苔の美しい庭園。鳥尾小弥太や田中仙樵ゆかりの茶室“忘知席”も。
高台寺 岡林院庭園について
【通常非公開/2021年秋に特別拝観】
「岡林院」(こうりんいん)は京都・東山の有名寺院、豊臣秀吉と北政所(ねね)ゆかりの『高台寺』の塔頭寺院。通常非公開ですが、2021年11月に特別拝観が実施。「ねねの道界隈にこんな苔の美しい庭園があったのか!」と驚く露地庭園があります。
いつからかは覚えていないけどこちらの茶席“忘知庵”のInstagramをフォローしていて、そこでの告知を見て10月の土日に一足先に特別拝観。これまで茶道や坐禅等の日本文化講座の実施スペースとして用いられたことはあったものの、このような特別拝観で公開されるのは初めてとのこと!
寺院としての歴史は1608年(慶長13年)に久林元昌禅師により創建。これは現存する高台寺の塔頭としては最も古いとか。この久林元昌という方、岡林院関連でしか名前が出てこないのだけど、建仁寺の記録によると北政所の縁戚に当たるそう。
まず庭園について。明治時代にこの地に移築された茶室“忘知席”へと至る露地庭。なので庭園もその時代の作庭かな…。
なんと言っても一面の苔の美しさ!ご住職がとても大切に日々お手入れをされているそう。豪快で大きな踏分石にも目が惹かれる。頭上を覆うモミジの高木の向こう側に見える東山の借景も素晴らしい。この巨石と借景のスケールが“禅の庭”以上の、近代にある程度権力を持った方の影を感じるんですよね~。
茶室“忘知席”は裏千家・又隠席の写しとされ、近代に大日本茶道学会を創立した鳥尾小弥太(鳥尾得庵)と茶人・田中仙樵が茶道を研究した場としても伝わります。鳥尾小弥太は萩藩出身で奇兵隊や明治維新後の陸軍で山縣有朋と共に行動した人物。前述の“ある程度権力を持った方”はこの人かもしれない…。
で、気になったのは、建物(お堂)の雰囲気があまりお寺って感じじゃない所。元のお堂は江戸時代末期に火災で焼失、現在の建築は明治時代に再建されたもの――だそうだけど、庭園から見ても“数寄屋造りの近代和風邸宅”といった趣き。
広間の床の間の奥が仏間になっていて、そこに御本尊が安置されているという面白い構造。なお仏間の天井画は『建仁寺』にも作品を残す田村月樵の作。
こんな時見たくなるのが立命館大学アート・リサーチセンターの『近代京都オーバーレイマップ』。これで見てると、昭和の半ばの時点で隣接する塔頭『月真院』はお寺の記号がついてるけど、現在の岡林院の場所にはその記号がない。明治時代の上知令で一時はお寺の手から離れたものを買い戻した…?それとも高台寺近隣の別の場所から移った…?
尚、昨年惜しまれつつ閉店した『高台寺 洛匠』が隣接します。2021年秋の京都で見てほしい庭園!
(2021年10月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
京阪本線 祇園四条駅より徒歩10分強
阪急京都線 京都河原町駅より徒歩15分
京都市営地下鉄東西線 東山駅より徒歩15分
最寄りバス停は「東山安井」徒歩6分
〒605-0825 京都府京都市東山区下河原町529 MAP