
国登録有形文化財の沖縄古民家を活用した沖縄そばの人気店は有名プロ野球選手や岸田総理大臣も訪問。沖縄様式の庭園も。
屋宜家住宅・庭園について
「屋宜家」(やぎや)は沖縄本島の南部に位置する八重瀬町にある沖縄そばの人気店。国登録有形文化財の沖縄様式の古民家「屋宜家住宅」が活用され、主屋の周囲には沖縄様式のお庭も。
沖縄本島の南側の海に面し、那覇市方面から『沖縄県平和祈念資料館』等への道中で通りかかる八重瀬町。先に八重瀬町指定有形文化財を活用した『上江門家住宅/UEJO SOBA』を紹介しましたが、もう一軒、文化財を活用した沖縄そば店があります。それが「屋宜家」。2007年のオープン以来人気を博し、プロスポーツのキャンプで訪れるプロ選手(MLBの吉田正尚選手、松坂大輔元選手など)や、更に過去には岸田総理大臣(当時)が訪れたこともあるとか。
その建築は昭和の戦後すぐ、1950~1955年頃の建立。戦後の建築ですが沖縄の伝統的な構えの古民家で、八重瀬の南の海岸で産出される琉球石灰岩の切石による石垣とヒンプン、そして沖縄らしい赤瓦屋根の主屋(カーラヤー)と離れ(アサギ)、そして井戸の5棟が国登録有形文化財。
戦災で失われた自宅を再建した屋宜家一代目・屋宜松さんは、物資が少ない時代にたびたび港や材木店に足を運んでは材を集めてこのカーラヤーを再建されました。
そのお庭も当時作庭されたもの。本土の和風建築のお庭とは(そもそも建物の配置が違うから)印象が異なるかと思いますが、ゾーンとして以下に分かれる。
●主屋の座敷の前にある枯山水(白砂の中に小さな立石とクルキー/コクタン)
●主屋の西側、旧家畜小屋の前の芝生エリア(現在は待機用のベンチ)
●主屋・離れの外側と石垣の細長スペースの各種植栽
先述の屋宜松さんは沖縄の風水(琉球風水)について研究した上でこのお屋敷を再建されたそう。枯山水の中にある沖縄ならではのコクタンと石組も風水的な意味・意図があるのだろう…と感じられます。(枯山水とヒンプンの間には当初は芝が張られていましたが、人気店になり離れも食堂になったのに伴い、現在は石畳に改変されています)
そして主屋、離れ周辺の樹種も沖縄や南国らしさを感じられるものが中心。防風林のフクギ、門前のブーゲンビリア、主屋からもう一つの主木にも見えるガジュマル、そして昔は食用も兼ねていたのかな…と思えるマンゴー、シークワーサーの木など。国指定重要文化財『中村家住宅』と比較しても、もう少し現代に近い“民家の生活”が感じられる植栽。 一方で、(沖縄では珍しい)ヤマザクラが地元の方には人気なのだそう。
そして沖縄様式の仏間、床の間のあるお部屋で人気の沖縄そばをいただけます(味についてのレビューはしませんが、そこは続々と人が訪れる人気店、間違いない!)。この屋宜家のオーナー・屋宜利夫さんはなんとJAL系列の日本トランスオーシャン航空(JTA)の元機長。貴重な古民家を保存・公開する手法としてこのお店を開店されました。
(沖縄観光はレンタカーが基本とはいえ)決してアクセスが良いとは言えない場所の文化財活用で人気店となった屋宜家さん。文化財ファンもぜひ訪れてみて。
(2025年1月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
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