明治時代の京町家を活かしたゲストハウスは、貴重な“泊まれる国登録有形文化財”。坪庭を眺められるお茶室も。
胡乱座(旧長岡家住宅)庭園について
「胡乱座」(うろんざ)は国登録有形文化財となっている明治時代の京町家のゲストハウス。四条堀川の交差点からすぐ近く。ゲストハウスではありますが、“House Museum”(歴史的建造物)を紹介する主旨で。公式サイトに書かれている一文は《「120年前からそこにある建物で寝る」のコンセプトを持った、インスタレーションとしてのゲストハウス》。
『こんな時だから、住んでる町のホテル、旅館、ゲストハウスに泊まりたい』シリーズ、京町家編その2です。「普通のホテルではなく京町家に泊まりたいな」と思って宿泊予約サイトで調べるとーー数多くの“京町家を活かしたゲストハウス”が出てきます。むむむ、選びがたい。
“庭園”にこだわって決めたのが『鯉屋』さんだったんだけど、もう一つ“文化財”というワードを検索ワードに加えてみた。
そこで出てきたのがこの胡乱座さん。明治時代に建てられ築120年を過ぎたこの邸宅は「旧長岡家住宅主屋」として国登録有形文化財となっています。その他、京都市の景観重要建造物、国の歴史的風致形成建造物にも認定。
検索で上位だから選んだというわけではなくかなり色々探しているんだけど、
■国の文化財の京町家でゲストハウスになっているのはここぐらい?
■国の文化財の京都の旅館とかは他にもありますが、1泊1.5万円は下らない感じ
■また他に「京都市の重要景観建造物」で宿泊施設になってる京町家もあるけど、それを売りにそれなりの価格設定になっている印象
という感じで、『京都で国の文化財に4,000円で泊まれる』というこの胡乱座さんは破格。5月一杯休業されていましたが、復帰した最初の週末に泊まりに訪れました。
そんな価値ある建造物なのに安い理由としては、《「昔のままの京町家」を体験する。という主旨なので、エアコンは無し。》《部屋の鍵もなし。》《防音性なし。》という点。なおトイレはウォシュレットだった(重要)。
『不便なものは不便なまま』と説明を受けつつもーー2003年に一度大修復されたその建物は“新たな生命を吹き込まれた京町家”といった感じはとても受けたし、一方で“通り庭”なんかは本当に古い雰囲気を残したままでーー通り庭ある京町家に泊まるのは初だったのでテンション上がりました。
この京町家が最初に建てられた時、ここに住んでいたのは大工の棟梁さんだったそう。主屋の2階には茶室も兼ねていた部屋(というか茶室)があり、古いガラス戸も含めこだわりが感じられます(場合によっては現在も宿泊に使われることも)。
離れの1階に新たな茶室“驀直菴”があり、事前に希望すれば茶の湯体験稽古・喫茶をすることも可。
そして主屋と茶室からは、京町家の坪庭が眺められます。
ご主人(あるじAさん)とも色々とお話させていただいたのですが、想いみたいなものは下記の記事に多く書かれていたのでこちらを是非一読ください。
■町家再生再訪・その5 胡乱座 <第1話>
■町家再生再訪・その6 胡乱座 <第2話>
■町家再生再訪・その7 胡乱座 <第3話>
■町家再生再訪・その8 胡乱座 <第4話>
■町家再生再訪・その9 胡乱座 <第5話>
ここに書かれていない点が一つあるとすれば、『コロナ前のこと、コロナ後のこと』。数年前は500軒ほどだった京都市の簡易宿泊所が2019年には3,000軒を越え、コロナ前から宿泊客数は減っていたと。11月のピーク期でも普通に空きがあったそうです。マジか。そこで方向性を再検討する時かと思っていたところに、COVID-19がやってきた。
「難しいですね」としか自分は言えないのだけど、それでも今後もまだまだ「京町家を活かした宿泊施設」は増えるのだと思う。何もしなければ減ってしまう京町家、やはり“寝る場所”になるのが一番シンプルだし。差別化がもっと難しくなっていくーー
その中で、『国の文化財の京町家に泊まる』という“体験”はここでしか得られないもの。基本的に自分はゲストハウスに泊まっても「人との出会いは求めていない」方なので(笑)、純粋に雰囲気だけーーが良し悪しの基準なんだけど。そういった“作品性”として、京町家の美的感覚を残して・活かしてくれている胡乱座はとても良かったし、“もう一つの家”のようにまた泊まりに訪れたい京町家!
(2020年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)