ジュンテンドー創業者の思いがこもった、津和野藩の豪農屋敷を活用した美術館と枯山水庭園。国登録有形文化財。
杜塾美術館(旧弥重家住宅)庭園について
「杜塾美術館」(もりじゅくびじゅつかん)は国の重要伝統的建造物群保存地区・津和野の古い町並みの南のはずれにある私設美術館。かつて津和野藩の筆頭庄屋の屋敷“旧弥重家住宅”として、明治時代に建築された本館(主屋)と門が国登録有形文化財となっています。
2021年7月に約5年ぶりに津和野へ。今回は時間の都合上、国指定名勝『旧堀氏庭園』までは行けなかったのですが、駅近の範囲内で庭園に立ち寄りました。
古い町並みを抜けて津和野川を渡ってちょっと行ったところにある赤瓦のお屋敷(なので正確に言うと重伝建地の範囲外)。元の屋敷の所有者・弥重家は津和野藩政時代には筆頭庄屋をつとめた豪農で、程近くにある藩校“養老館”の創設にも深く関わったそう。
そんな由緒あるお屋敷ですが、昭和の終わり〜平成のはじめ頃には荒廃し取り壊しという話も浮上。
それを惜しんだ『ジュンテンドー』(西日本、特に山陰〜中国地方に数多くの店舗を展開するホームセンター)の創業者・飯塚道正さんにより修復され、1992年(平成4年)に美術館として新たなスタートを切りました。
“杜塾”というのは弥重家が庄屋をつとめたこの地の名前はかつて“森村”だったことや、津和野で育った明治の文豪・森鴎外にちなんで命名されたもの。塾長は飯塚道正さんですが、2015年に85歳で逝去されました。
“美術館”と名のつく通り古民家そのものがメインのハウスミュージアムというわけではなく、元々土間だった場所が展示ギャラリーとなって、津和野生まれの画家・中尾彰とその夫人・吉浦摩耶の両画伯の作品を中心にスペインの画家・ゴヤの『闘牛技』の版画などが展示。
そしてお屋敷の周囲を囲むように枯山水の庭園があります。西側が前庭、東側が座敷から眺める主庭?、そして南側には茶室へと至る露地庭。
作庭については正確な情報は今のところないのですが、白砂が引かれた前庭〜主庭は所々新しさを感じるので(よくお手入れされてるから??)平成の開館時に作庭されたのかなあ、って感じがする。
で、南庭も新しさを感じる所もあるけど、こちらはまたタイプが違って。飛び石や延段(石敷き)、砂の感じが“出雲流庭園”っぽさを感じるんですよね〜。
津和野・益田の他の文化財庭園(非公開のもの含む)にはあまり“出雲流”っぽいものは無い?んだけど、萩や山口市内に近い作風が伝わっていることを思えば津和野にも入り込んでいたはず。
この美術館、私設の美術館でありながら、開館当初有料だったところから現在は無料で公開されているというのが珍しい(地元の作家さんによる作品やお土産が売られていたりする)。
目先の入場料収入ではなく“地域の方や観光の方に1人でも多く足を運んでいただくこと”に目的・価値・意味を見出してそうなったのだと思うので。この紹介見てまた誰か足を運んでくれたら嬉しいし、そしてその意図も汲み取りながら鑑賞をしていただけたらいいなぁ。
(2021年7月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)