数寄屋建築の名工・中村外二が最晩年に地元・富山に残した茶室”墨光庵”と、美術館に作庭された複数の庭園。
富山県水墨美術館 五福山水苑・茶室”墨光庵”について
「富山県水墨美術館」(とやまけんすいぼくびじゅつかん)はJR富山駅から南西部、富山大学のほど近くにある、その名の通り“水墨画”を中心とした日本画を展示・収蔵する美術館。
敷地内には池泉回遊式庭園“五福山水苑”をはじめ複数の和風庭園があり、茶室“墨光庵”は京都を代表する数寄屋大工・中村外二が晩年に地元の富山県に遺した建築。
2020年に続き2021年の6月に富山へ。昨年訪れた後に「水墨美術館にも茶室と庭園がありますよ」とインスタで教えていただいて、初めて訪れました。
近代以降の水墨画を中心に、日本文化の美を紹介する美術館として1999年(平成11年)に開館。常設展では富山県出身の作家・下保昭の作品室のほか、横山大観、竹内栖鳳、川合玉堂、菱田春草、堂本印象、山元春拳、小林古径といった近代に活躍した日本画家の作品を鑑賞することができます。訪れた時の企画展は現代の作家さんの展示だった。
瓦葺き平屋の外観が和モダンを感じさせる建築は富山県建築設計監理協同組合の設計。その建物を囲むように、庭園は大きく分けて3つあります。
まずは前庭の池泉回遊式庭園“五福山水苑”。“五福”というのはこの美術館が建つ地名。その畔には四阿もあり、地元の方が散歩する様子もありました。2000年(平成12年)度のうるおい環境とやま賞を受賞。
そして一面の芝生が広がる中庭は美術館そのものよりも広そう。芝生だけど、周囲の植栽が桜やマツ、サツキの刈り込みなどが(和モダンな館内の廊下と相まって)和風な雰囲気を漂わせる。
そして敷地の最奥にあるのが茶室“墨光庵”(ぼっこうあん)。国内の料亭・旅館などの数寄屋建築のみならず、海外でもロックフェラーやジョン・レノンの邸宅を手掛けた日本を代表する大工棟梁・中村外二。
富山県小矢部市出身の中村が“故郷にも茶室(作品)を残したい”との想いから作られた茶室。残念ながら開館前の1997年に氏は亡くなられ、現当主・中村義明さんの手で完成。“墨光庵”の命名は下保昭によるもの。
立礼席でお茶をいただくことができます。立礼席は下がガラス戸になっていてとても明るい。そこからは茶室を囲む形で作庭された露地庭・白砂と苔の枯山水庭園の姿を覗けます。あまり“庭園”のイメージはない富山の街に、京都の名工が遺した集大成の作品。ぜひ訪れてみて。
(2021年6月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR富山駅より路線バス「富山県水墨美術館前」バス停下車 徒歩1分/「五福末広町」バス停下車 徒歩5分
富山地方鉄道市内線 トヨタモビリティ富山 Gスクエア五福前駅より徒歩5分
JR富山駅より約2km(*駅周辺にシェアサイクルあり)
〒930-0887 富山県富山市五福777 MAP