室町時代に郡上を治めた東氏の館に作庭された、借景が美しい池泉庭園。『古今伝授の里フィールドミュージアム』も。国指定名勝。
東氏館跡庭園/古今伝授の里フィールドミュージアムについて
「東氏館跡庭園」(とうしやかたあとていえん)は鎌倉~室町時代にかけて郡上の地を治めた領主・東氏の居館に作庭された中世の庭園。『古今伝授の里フィールドミュージアム』という野外博物館の施設の一つとして公開されています。国指定名勝。 2019年夏に初めて訪れました!
国の重伝建である古い町並みで知られる郡上八幡の中心からは10km強。このフィールドミュージアムへ至る集落一帯が東氏の拠点が置かれた地域で、この東氏館跡庭園だけではなく寺社仏閣(跡)や篠脇城跡といった遺構が残ります。
中でも篠脇城跡については以前よりその存在が知られていたそうですが、その麓に位置する東氏の館跡が発掘・復元されたのは昭和54年〜平成4年と割と最近のこと(芝生が新しい感じがするのはそのため)。その過程、昭和62年(1987年)に貴重な中世の武将庭園として国の名勝になりました。
その池泉庭園は石組がほぼ完全な形で発掘されたそう。地理的に直線距離で言うと比較的近く(あくまで比較的)同じ中世の武将庭園である『一乗谷朝倉氏庭園』と比べると、石が主張し過ぎていないところが違うところ。一方で平面的な池泉庭園であり、山の斜面から遣水が流れて来て、この池泉を経てまた斜面を下る…という構成は朝倉氏庭園や『旧秀隣寺庭園』といった室町時代の庭園と同じ。篠脇連山など、ほぼ360度に広がる山々の借景も美しい!
なおその池泉部分以外には、東氏が好んでいた古今和歌集や新古今和歌集に詠まれているものを中心に約70種類の花木を配し、“古今植物園”と名付けられています。中でもぼたん園は2,000平方メートルに1,500株の牡丹が植えられた規模の大きいもの。牡丹の見頃は5月上旬。
東氏館は室町時代に二度(1468年、1540年)、それぞれ美濃国守護・斎藤妙春と越前の朝倉氏に攻められ戦火に遭いました。そしてそれを機に現在城下町として古い町並みの残る郡上八幡に拠点を移したそう。
東氏館跡庭園、篠脇城跡のある広場一帯から道路を挟んだ場所に、平成5年にオープンした『古今伝授の里フィールドミュージアム』の中心施設が並びます。
『東氏記念館』では東氏の史料や東氏館跡からの出土品、また代々和歌を好んでいた東氏に関連する古今伝授・和歌に関する史料が展示。東氏は中でも9代目・東常縁は古今和歌集研究の第一人者だったのだとか。日本で唯一の和歌・短歌などの歌集専門文庫『大和文庫』といった図書館も隣接。
そして現代的な庭園として。東氏記念館、大和文庫の少し高台にある和風モダン建築『篠脇山荘』はその座敷から眺める池泉・風景が美しく、篠脇山荘の隣にある『茶屋いなおほせどり』にも現代になってから作庭されたという枯山水庭園が。そして『レストランももちどり』の建築もかっこいいんだよな〜。それぞれ設計を手掛けたのは瀧光夫さんで、中部建築賞、全国建築業協会賞、公共建築百選などを受賞。
いずれもモミジの新緑が美しい場所、秋の紅葉の時期にも美しいのだろうなあ…。またいつかその時期に行ってみたい!
(2019年8月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
長良川鉄道越美南線 徳永駅から徒歩約30分
郡上八幡駅より路線バス「郡上徳永」バス停より徒歩約25分
※個人的には郡上八幡駅からのレンタサイクルも検討しました。片道約11km。
〒501-4608 岐阜県郡上市大和町牧912-1 MAP